「つくる会」の歴史わい曲教科書
検定合格
国際社会への挑戦
第2の侵略行為
誇大妄想に等しい「物語」が、中学校で「事実として教えるに足る歴史」として公的に認められた――。文部科学省は3日、来春から小中学校で使われる教科書の検定結果を発表。「新しい歴史教科書をつくる会」が主導して編集し、扶桑社が出版する中学の歴史と公民の教科書を合格させた。(社会欄に内容詳細)
北南朝鮮、中国―日本政府の責任を厳しく追及 朝鮮中央通信は5日の論評で、内外の強い抗議にもかかわらず「つくる会」の教科書を検定で合格させた日本政府のふるまいは、「過去、日本帝国主義によって過酷な災難を強要された朝鮮とアジア各国、また国際社会と公正な世論に対する耐えがたい侮辱であり、公然たる挑戦だ」と非難した。 さらに論評は、「日本では歴史をわい曲し、新世代に注入するための右翼反動勢力の策動が執ように続けられてきた。そして今日は、こうした動きに日本政府が公式的に参加するまでにいたった」と指摘。「そもそも、日本政府は反動的な歴史教科書作りを当初からひ護してきた。そして最後まで正当化、合法化することで、新世紀に入ったとたん、人類と歴史の前に再び容赦できない罪を犯した」と断罪した。 抗議の声は、南朝鮮でも高まっている。3日、発表された外交通商省スポークスマン声明は「深い遺憾の意」を示し、4日には韓昇洙外交通商相が寺田大使を同省に呼び、上記の意思を直接伝えた。 また、「韓国挺身隊問題対策協議会」をはじめ南の59の市民団体でつくられた日本歴史教科書改悪阻止運動本部は3日、声明を発表。「(『つくる会』の教科書が)わい曲された歴史認識という点においてはまったく変わるところなく、形式的な修正が加えられただけで検定を通過したことは、きわめて深刻な問題」「世界の平和に逆行する第二の侵略行為にほかならない」として、日本政府に対し、「つくる会」教科書の検定承認を取り消すよう求めた。また、この教科書が採択されないよう日本の市民団体と連帯して運動を展開していくと宣言。4日には署名運動をスタートさせた。各階各層市民も連日、集会や日本大使館への申し入れなどの抗議行動を繰り返している。 中国も、3日に発表した外務省、教育省の各スポークスマン談話、駐日大使の会見や国営新華社通信の論評などを通じて、日本政府の責任を厳しく追及した。 「子どもと教科書全国ネット21」など日本の12市民団体の代表は3日、東京・千代田区の日本教育会館で記者会見し、「つくる会」の歴史教科書の検定通過を非難する共同アピールを発表。同教科書が子どもたちの手に渡らないよう今後、採択阻止へ声をあげていこうと訴えた(アピール要旨社会欄)。 過去を清算しない限り繰り返される歴史わい曲 昨年4月、検定申請された「つくる会」の歴史教科書は史実をわい曲し、とくに日本のアジア侵略を正当化。北南朝鮮、中国などから激しい批判を浴びていた。しかし、日本政府・文部科学省はこうした批判を「内政干渉」だとはねつけ、一部修正はさせたものの、侵略美化、天皇・自国賛美、アジアべっ視で一貫した基本的性格は温存させたまま合格させた。 一方、同時に合格した他七社の歴史教科書も、前回の97年当時全社が登場させた「従軍慰安婦」の記述をそのまま残したのは1社のみで、「侵略」という表現も6社が削除した。「つくる会」に代表される歴史わい曲勢力の影響力の浸透ぶりと、自ら掲げた公約さえ反故にしてそれを見過ごしてきた日本政府の「確信犯」ぶりが透けて見える。 82年、社会科教科書の検定で、文部省(当時)が中国、朝鮮などへの「侵略」という記述を「進出」に改めるよう求めたことに対し、アジア各国が「歴史のわい曲」だと一斉に抗議した。日本政府はこれを受け、自ら検定基準に「近隣諸国との国際理解と国際協調に配慮する」という「近隣諸国条項」を加えた。 さらに93年、当時の河野官房長官が「従軍慰安婦」問題で軍の関与を認め、「(歴史教育などを通じて)永く記憶に留め、過ちを繰り返さない」という談話を発表。95年には当時の村山首相がアジア諸国に与えた「多大な損害と苦痛」におわびと反省を表明した。こうした流れを受け、97年の全中学歴史教科書に「従軍慰安婦」に関する記述が登場した。 するとたちまち反発が起こった。同年の「つくる会」発足を機に、産経や文春などのマスコミ、歴代閣僚ら与党自民党の大物政治家を含む政・済界、右翼団体が一致団結。「慰安婦」記述を削除し、歴史教科書を「正す」ためのキャンペーンを大々的に展開した。 日本政府は今回、アジア諸国の抗議について「内政干渉だ」と拒絶したが、被害を受けた当事者が事実関係を質しているのだから、内政干渉ではない。さらに教科書の作成自体は民間でも、検定を国の責任で行う以上、その内容について対外的に政府が責任を持つのは当然だ。過去と正面から向き合い、自ら清算しない限り、歴史わい曲という「悪循環」は繰り返されるだろう。(韓東賢記者) |