朝米交渉で平壌を訪問
ケネス・キノネス氏に聞く
(元米国務省朝鮮担当官)
信頼してこそ協力できる
朝米関係−経済制裁やめ正常化を 6月30日〜7月2日、東京で開かれた朝鮮人道支援NGO会議に参加するために来日した、米国のNGO、マーシー・コー・インターナショナルのケネス・キノネス氏に話を聞いた。同氏は近年、マーシー・コーの東北アジアプロジェクトの責任者として対朝鮮支援活動に携わっているが、それ以上に1994年10月、朝米基本合意文という結実をもたらした93〜94年の朝米交渉に、米国務省の朝鮮問題担当官として直接関わったキーパーソンの1人として有名だ。(関連記事) ―朝米関係における、マーシー・コーの当面の課題と最終的な目標は。 マーシー・コーは79年に発足した人道支援団体だが、食糧支援と同時に、朝鮮の食糧自給を望んでいる。さらに、米国の朝鮮に対する経済制裁を終わらせ、国際社会が協力して朝鮮を助け、朝米関係を正常化させるという長期的な目標を持っている。そうしてこそ、食糧不足や災害を招く原因を解消できる。 ―最近、南朝鮮で出版された著書には、93〜94年に朝米間で起きた出来事が生き生きと綴られていたが。 9月には日本語版が東京で、来年初めには英語版が米国で出版される予定だ。 実は95〜98年頃の出来事について第2弾を書こうと思っている。寧辺の核施設での新たな協力が始まり、朝鮮で米軍が働き、また食糧事情の悪化によって国際的なNGO、国連機関が朝鮮で働き出した、1つの大きな節目となる時期だからだ。つまり米朝間の約束がスタートし、実際に協力が行われるまでが第2弾の内容となるだろう。 新しい関係とはどうやってスタートさせるものなのか、人々に理解して欲しいと思っている。なぜなら私たち米朝は敵同士で、互いに悪い記憶しかなかった。しかし、すべての人は同じ人間であるという基本的な認識を持つことから始めなくてはならない。そのうえで信頼感を持ってこそ、協力関係をスタートさせることができる。 ―先日の南北首脳会談について。 もちろん、首脳会談はとても重要な始まりだ。ただ、急にすべてが変わるわけではない。両リーダーはまず、自分の下にいるすべての政府官僚が、今後の交渉に1つの朝鮮という立場で臨むよう教育すべきだろう。 離散家族の再会の合意は素晴らしい第1歩だ。また、総書記がソウルに行くのもとても大切だ。そうすれば、実のある前進があるだろう。 双方にはすでに南北基本合意文という素晴らしい合意があるので、あとは何をどう始めるかを話し合うだけだ。そうして互いの信頼関係を築いた後に、安全保障などの難しい問題を話し合えばいい。この点で、米、日をはじめ各方面を説得するための両首脳のリーダーシップがとても大切となる。 ―米政府の対朝鮮政策に与える影響は。 すでにとても肯定的なインパクトがあったと思う。まず、国会が沈黙していること。平壤とソウルが一緒に行動したので、平壌を批判できないのだ。次に、これまで朝鮮半島問題に関心を払っていなかったオルブライト国務長官が、その重大さを悟ったことだ。 南北の合意は、南北朝鮮が手にした成功であって、米国の成功ではない。米政府は、朝鮮民族が自らの問題を解決することに対して口出しすべきではない。 ―朝鮮の政策に対するあなたの個人的な評価は。 ワシントンから見ると、朝鮮のイメージはとても暗い。朝鮮はもっと自国のイメージに敏感になっていい。 先日の南北首脳会談は、朝鮮のいいイメージを米国人に与えるうえでとてもいい機会だった。それまで米国人は、朝鮮と言えばミサイルや軍事というイメージしかなかった。私たちが冷戦から平和へと関係を変えようとするのならば、米朝が共に自国のイメージを変えていかなくてはならない。 そのために、平壤にできる重要なことがある。まずは、国際社会やNGOとの協力だ。次に、マスコミとの付き合い方を学ぶことだ。朝鮮は、世界のマスコミを通じて世界の世論に働きかけることができるのだ。 ―南北首脳会談後、ホワイトハウスとペンタゴンとの間で意見の相違は。 ホワイトハウスは今、外交問題にあまり感心を払っていない。国務省のサポートもない。対外交渉における米の出方を大きく左右しているのは国防総省だ。 しかし、これが即、朝鮮にとって危険なことだとは思わない。問題なのは、交渉による問題解決能力が弱まることだ。 ―最後に、在日朝鮮人に何かメッセージを。 朝鮮は北も南も同じだ。朝鮮民族は同じ言語、同じ文化を共有している。それが問題解決にプラスになるのならば、実に素晴らしいことだ。(崔寛益、権鍾聲記者=本紙英字紙ピープルズ・コリア) |