朝・日国交正常化第9回本会談
過去清算で具体案示す
朝鮮 正常化へのロード・マップも
「2度と決裂させない」で一致 朝・日国交正常化のための第9回本会談が4日から7日まで平壌で行われた。92年11月に北京で行われた第8回会談の決裂以来、7年半ぶりの再開。5日の会議で双方は、会談を「2度と決裂させてはいけない」ことで意見の一致を見たものの、双方の主張には依然として隔たりが見られ、日本側の態度いかんによっては長期化する可能性もある。 (関連記事) 双方の姿勢に隔たり 報道を総合すると、朝鮮側は5日の会議で (1)過去の清算 (2)国交正常化 (3)懸案問題の解決というロード・マップを示したが、日本側は「ら致問題解決の事実上の棚上げに通じることを理由に」(東京新聞7日付)これを拒否した。 朝鮮側が提示した過去の清算というのは、かつての日本の犯罪行為に対する (1)謝罪 (2)人的、物的損害に対する補償 (3)文化財の返還ならびに補償 (4)在日朝鮮人の法的地位改善の4項目。 これに対して日本側は、過去の清算の重要性については同意したものの、行方不明者問題が「日朝関係改善の上で避けて通れない問題」(産経新聞6日付)との認識を示すなど、国交正常化に対する双方の姿勢に依然と隔たりがあることを浮き彫りにした。 過去を清算して国交を樹立し、その後、懸案問題を協議しようという提案は、今回が初めてではない。すでに91年5月の第3回会談で朝鮮側が提案しており、日本側はこのときも拒んだという経緯がある。 過去の清算という基本問題以外の懸案事項(行方不明者、ミサイル問題)に日本側があくまでも固執するのかどうかはまだ不明だが、固執すれば会談の長期化は避けられず、さらに前回のように懸案問題解決を前提条件とした場合、会談が再び決裂する恐れもある。8回会談で日本側は、「李恩恵問題解決」を前提条件にして、午後からの会談に参加しなかった。 まず謝罪について鄭泰和団長は、日本政府の最高責任者が行い、正常化の最終文書に明記すべきだと、従来の立場(第1回会談)を強調し、補償についても被害者が十分に納得できる額というガイドラインを示した。また文化財に対する返還と補償、在日朝鮮人の法的地位改善問題を過去の清算問題に含めている。在日朝鮮人の法的地位問題は、決裂前の会談では第4議題として取り扱われていた。 これまで補償問題で朝鮮側は、戦争被害に対する賠償と財産請求権の2形態があるとの立場を取っていた。しかし今回、「交戦国としての賠償や戦後補償については言及しなかった」(産経新聞)という。 日本の戦争犯罪については、国連人権委が「従軍慰安婦」問題で日本政府に国家的、法的責任を果たすことを求めているほか、米国でも強制労働に対する賠償請求訴訟が行われている。日本政府が主張している「実定法」による行為に対して国際社会が犯罪であると明確に認めており、もはや言い逃れできない状況にある。こうした状況を踏まえて朝鮮側は「被害者が納得できる補償」という表現を使ったとも受けとれる。 これに照らしてみると日本側は、相変わらず「行方不明者」問題を持ち出すなど(3)と(4)の項目で変化はなかったようだ。 (1)と(2)については、順次明らかになるだろうが、前回、核問題の解決なくして朝・日国交正常化はありえないと圧力を加えていた米国が、「日朝間の関係改善を強く支持しており、交渉再開を歓迎する」(米国務省のルービン報道官)と表明していることは、日本にとって朝鮮との関係改善への追い風になる。 いずれにしても日本が朝鮮との不幸な過去を、きちんと清算する準備ができているのかどうかが、今後の会談の成否を左右するだろう。(元英哲記者) 次回は5月下旬、東京で/共同報道を発表 朝鮮民主主義人民共和国政府と日本政府間の第9回本会談が7日午前、平壌で終了した。朝鮮中央通信は、会談が良い雰囲気の中で行われたと伝えた。また、両政府代表団が同日、次のような共同報道を発表した。 双方は朝・日関係を改善発展させることが必要であるとの認識に基づいて、過去をどのように清算するかという問題をはじめとする朝・日国交正常化実現と関連した諸般の問題について、真しなる協議を行った。 双方は今後、朝・日政府間本会談を継続すべきだということを再び確認し、第10回本会談を、5月下旬に東京で行うことで意見の一致をみた。 |