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〈07年朝鮮半島を振り返る -朝米-〉 9.19履行が次の段階へ

際だった2国間対話、尺度は「行動」

 今年の朝米対話は電撃的なベルリン会談(1月16〜18日)で始まった。以後も2者会談と協議、接触が引き続き行われるなど、接近が際立った一年だった。12月上旬には金正日総書記にブッシュ大統領が親書を送った。

BDAで立場が逆転

【朝米核問題主要日誌】

1月16〜18日 ベルリンで朝米会談。「一定の合意達成」(朝鮮外務省代弁人)
1月30〜31日 北京で金融制裁解除を話し合う朝米実務協議
2月8〜13日 第5回6者会談第3ラウンド。2.13合意発表。
3月5〜6日 ニューヨークで朝米関係正常化作業部会
3月19〜22日 第6回6者会談。BDAの解決遅延で議題を討議できず休会
6月21日 ヒル次官補が平壌訪問
6月25日 朝鮮外務省代弁人、「BDA問題解決、2.13合意の履行に入る」
7月14日 IAEAによる監視カメラ設置などの寧辺核施設封印作業実施
7月18〜20日 6者会談団長会議。朝米は北京の大使館を相互訪問
9月1〜2日 ジュネーブで朝米関係正常化作業部会
9月27〜30日 第6回6者会談第2ラウンド。10.3共同文書発表
10月31日 北京の朝鮮大使館で6者会談の朝米団長接触
11月1日 寧辺核施設の無力化作業を履行する米国実務代表団平壌到着
11月19〜20日 ニューヨークで金融問題関連の朝米実務会談
12月3〜5日 ヒル次官補訪朝。金正日総書記へのブッシュ大統領の親書伝逹

 6者会談は、2005年の9.19共同声明発表以後、マカオの「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)問題で1年以上膠着状態に陥っていた。朝米間では対話すらなかった。ところが去年10月、朝鮮の核実験以後急進展。現状の打開にとどまらず、「密月」と呼ばれるほど緊密な関係へと向かった。

 年始のベルリン会談以後も、6者会談米国側首席代表であるクリストファー・ヒル国務次官補が6月末と12月初めの二度にわたり平壌を訪問した。

 また、6者会談に参加するために北京を訪れた朝米の団長らがそれぞれの大使館を相互訪問し、関係正常化作業部会も二度開かれた。さらに、金融取引分野で協力するという双方の合意に従って、BDA問題解決以後も金融会談が開かれた。

 ブッシュ政権は発足以後、「先核放棄」を唱えながら、2国間協議には絶対に応じることができないという立場をとってきた。BDA問題の解決を求める朝鮮の主張に耳を傾けることはなかった。朝鮮が去年6月、ヒル次官補を平壌に招請したときには悪意に満ちた「無視」で答えた。

 このような過去を踏まえると、今年のひんぱんな接触は大きな変化だといえる。

 ヒル次官補は今年4月、BDAに凍結された朝鮮の資金返還の遅延で6者会談合意履行が遅滞していたのと関連、6者会談朝鮮側団長の金桂官外務次官と会ってBDA問題を直接論議したいという意思を表明した。金次官と北京で会うのを期待して、ソウル滞在の日程まで変更しながら北京に向かった。が、金次官は現れなかった。2国間協議を頑なに拒否してきた米国が接触を求めているのに、これを朝鮮に拒否されたのだ。朝米間の力関係の逆転とも見られる出来事だった。

確固たる非核化意志

2.13合意の発表を前に手をつなぐ6者会談各国団長ら(2月、北京)

 2月に行われた第5回6者会談第3ラウンドでは、2.13合意が発表された。朝鮮半島非核化に向けた初期段階行動措置として朝鮮が60日以内に核施設の稼動を中止する一方、他の5者は5万dの重油を提供することになっていた。それから1カ月後に開催された第6回6者会談ではこの初期段階措置の履行状況を中間点検し、2.13合意を本格的な行動段階に移行させようとしたが会談は空転した。2.13合意発表と同時に米国が約束したBDA問題の解決がなされなかったためだ。

 朝鮮は「行動対行動」の原則を貫徹させた。BDAの凍結資金解除が現実的に証明される時に行動した。朝鮮は再三にわたって強調してきたように、BDA問題をいくらかの資金を取り戻すという単純な実務的問題として捉えずに、米国の対朝鮮政策変化の一つの尺度として見ていたからだった。

 BDA問題解決の遅延で6者合意履行が停滞していたとき、朝鮮の非核化意志を疑問視する声も多かった。しかし朝鮮の非核化意志は確固としていた。

 朝鮮原子力総局長は6月16日、BDA問題がまだ完全に解決されていない段階で国際原子力機関(IAEA)実務代表団を平壌に招請した。また、朝鮮外務省スポークスマンは7月6日、重油提供の一部が入って来た段階で核施設の稼動を中止することができるという立場を表明した。そして、2.13合意の義務を約束の期間と順序を繰り上げて履行した。

 朝鮮の最終目標は「核強国」ではない。真の朝鮮半島非核化だ。朝鮮の一方的な武装解除につながる「非核化」ではなく、朝米敵対関係を清算して朝鮮半島とその周辺からすべての核脅威を根源的にとり除く非核化だ。これは金日成主席の遺訓だ。

 朝鮮はこの目標に向けてひとつひとつ問題を解決していっている。非核化のためなら、朝鮮は自分の義務履行を躊躇することはないだろう。

注目される信頼構築

【その他の動き】

4月8〜11日 ニューメキシコ州知事が訪朝。6体の米兵遺骨を引渡し
8月10日 板門店で朝米軍部大佐級会談。ウルチ・フォーカスレンズに抗議
8月31日 朝鮮外相が洪水緊急医療物資を持って訪朝した米代表団と面談
10月4〜17日 朝鮮テコンドー代表団18人が訪米。5都市で示範競技
10月27〜31日 朝鮮の医療関係者訪米。米国内の医科大学と交流
11月8日 朝鮮中央通信、貿易船「テホンダン」号を救助した米側に感謝
12月11日 NYフィルハーモニックの来年2月26日平壌公演を公式発表

 9月末に行われた第6回6者会談第2ラウンドの結果、10.3共同文書が発表された。9.19共同声明履行のための2段階措置が本格的な履行段階に入った。

 その後の動きが活発だ。ヒル次官補が12月に訪朝し、金融会談も行われた。ニューヨーク・フィルハーモニックの来年2月の平壌公演が公式発表されるなど、信頼構築の雰囲気がつくられている。

 しかし重要なのは、合意による自らの義務の履行、すなわち「行動」だ。

 2.13合意履行を遅らせたBDA問題は、米国が制裁解除問題を単なる技術実務的な問題として扱うのではなく、政策的決断を下して実際に行動に移するときに問題がはじめて解決できるという教訓を残した。

 朝鮮はすでに、6者合意による年内核施設無力化に向けた行動を起こした。

 10.3共同文書によると、「行動対行動」の原則に従い、今年末まで朝鮮が核施設の無力化、核計画の申告を行い、一方、米国は朝鮮を「テロ支援国」リストからはずし「敵性国通商法」適用を終息させることになっている。

 その期限が刻一刻と迫っている。半世紀以上対峙してきた朝米双方が信頼を構築できるかどうか、重大な局面を迎えている。(姜イルク記者)

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[朝鮮新報 2007.12.21]