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横田めぐみさんの遺骨鑑定 日本政府「偽物」発表は疑問 南の連合ニュースが大きく報じる

 既報のように、横田めぐみさんの遺骨鑑定を「偽物」だとする日本政府発表(2004年12月8日)に対し、朝鮮中央通信社は今年1月24日、「日本政府の鑑定結果はねつ造」だと、DNA抽出方法など具体的事例を上げて詳細に反論を加えた。しかし、日本政府は朝鮮側が指摘した内容について反論もできないまま「遺骨は偽物」とする従来の見解を変えようとしていない。こうした中、英国の科学専門雑誌「ネイチャー」英文ホームページが2月3日付に、遺骨を鑑定した吉井富夫帝京大学講師を取材した記事を掲載。その中で吉井講師は「鑑定は断定的なものではなく、また、サンプルが汚染されていた可能性がある」ことを認めた。日本のマスコミが「ネイチャー」誌報道をほとんど無視している中、南朝鮮では連合ニュースなどが同誌報道を法医学専門家たちの「日本政府の鑑定結果は疑問」だとする指摘とともに大きく取り上げた。以下、連合ニュースが9日付で報じた記事を整理、紹介する。

「ネイチャー」誌が提起した問題点

遺骨問題と関連した日本政府の発表に南朝鮮内部から多くの疑惑が提起されている(写真は昨年11月、平壌で行われた朝・日政府間実務接触)

 「ネイチャー」誌は、日本には火葬した遺骨を鑑定した経験のある法医学専門家が吉井講師を含めほとんどおらず、1200度で火葬された遺骨の中にDNAは長時間存在できないということなどを根拠に、遺骨鑑定に失敗したという結論を下した。簡単に言うと、日本政府の政治的立場とは関係なく、科学的見地からは遺骨が偽物なのか本物なのか、その結論を保留したことになる。

 帝京大学研究チームの遺骨鑑定結果の間違いの可能性については、今回の「ネイチャー」誌報道以前から、すでに国内の法医学者たちの間で提起されてきた。彼らは、2002年大邱地下鉄火災事件を契機に、焼けた遺骨の鑑定において世界的なノウハウを持っているという評価を得ている。

 ソウル大学のリ・ジョンビン医大教授(法医学)は、「1200度で火葬された遺骨からDNAを抽出するのは事実上不可能で、万が一、抽出されたとしても遺骨のものではなく、外部から混入した異物の可能性を排除できない」と、懐疑的な反応を見せた。

 吉井講師もまた、「ネイチャー」誌とのインタビューで、遺骨は何でも吸い取る固いスポンジのようなもので、遺骨にそれを扱った誰かの汗や皮脂が染み込むこともあると認めている。

日本政府はなぜ発表を強行したのか

 科学的に遺骨の真偽が確定されていない状況下で、日本政府が、北から横田めぐみさんのものだと渡された遺骨を偽物だと、一方的にマスコミ発表を強行した背景に、疑惑の視線が注がれている。

 日本政府は、遺骨鑑定結果が北に不利に出た場合、両国間の外交的論難が予想されることをよく知りながらも、遺骨鑑定を信用できる第3国の機関に依頼しなかった。さらに、遺骨鑑定を依頼した科学警察研究所と帝京大学研究チームの分析結果が異なるのに、帝京大学研究チームの分析結果だけを事実として断定する無理な手法を使った。

 異なる結果が出た場合、結論を下すことに慎重でなければならないというのが、国内法医学専門家たちの一致した指摘だ。とくに、外交的に敏感な事案の場合、真偽に対して論難が起きないよう確実な証拠を提示しなければならないということは常識だ。

 北が1月24日、朝鮮中央通信社を通じて備忘録を発表し、帝京大学研究チームの遺骨鑑定結果に対して一つひとつ反論した後の、日本政府が見せた反応は合理的なものではなかった。

 日本政府が分析結果にそんなに確信を持っていたなら、遺骨を鑑定した研究チームが直接、北が提起した疑問点に反論するか、公開して実験過程を検証してもらい、科学的に解明すれば済んだ問題だった。

 このため、日本政府が国内の反北世論に後押しされながら、対北圧迫政策を合理化しようとする次元で遺骨事件を政治的に利用したのではないか、という疑惑が提起されている。

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[朝鮮新報 2005.3.17]