民族教育の制度保障を

大阪で教育権拡充のための同胞集会


民族教育拡充のために立ち上がった大阪の同胞たち(8日)
 大阪の同胞が民族教育の制度的保障を求める運動に決起した。8日、在日本朝鮮人民族教育大阪府対策委員会が主催する「民族教育の発展・拡充のための大阪同胞集会」がクレオ大阪中央で開かれ、呉秀珍・総聯本部委員長、10地域の民族教育対策委委員長、朝鮮学校の保護者をはじめとする700余人の同胞が参加した。集会では保護者らが発言し、8割以上の同胞の子どもが日本学校に通う現実、若い世代の中で民族性が失われていく現状に強い危機感を示しながら、これを食い止めるためには民族教育しかないとの思いを吐露。1人でも多くの同胞の子どもたちに民族教育を施すため、朝鮮学校の処遇改善を求める20万人署名運動や自治体に対する助成金拡充の要請に一丸となって立ち上がろうと呼びかけた。なお、この日から大阪では一般市民を対象にした朝鮮学校の一般公開授業が始まった。(関連記事)

10年間の運動

 集会ではまず、大阪の同胞がこの10年間、民族教育の権利を獲得するために繰り広げてきた運動の道のりがスライドで紹介された。JR定期券割引差別是正、私立学校と同等の助成金、国立大学への受験資格…。大阪の同胞は94、96年と2回にわたって20万人署名を集め、府知事や文部大臣に提出。世論を大きく盛り上げた。

 また同胞らは大阪市などに保護者補助金を求める要請も続けている。府下自治体に対する要請は10年間で250回、参加した同胞は2500人を超える。

 同胞らの運動が結実し、10年の間に自治体からの助成金は3000万円台から3億円にアップ。「朝鮮学校を各種学校とは見ない」との府の見解が発表され、「授業料軽減制度」が私立学校と同等に適用されるようになった。高体連などスポーツ大会への出場資格も勝ち取った。スライドには、街頭署名に立ち処遇改善を求めたり、署名用紙を抱えて府庁を訪れる同胞の姿が映し出され、民族教育の権利を自らの手で獲得してきた同胞らの姿が会場に伝えられた。

一丸となって

 集会では、冨森和男・府教職員組合副委員長、林同春・兵庫県外国人学校協議会会長が来ひんのあいさつをした後、民族教育府対策委の金憲信委員長(総聯本部副委員長)が基調報告を行った。金委員長は、若い世代の中で帰化、同化が進んでいるのとあいまって朝鮮人を日本に帰属させようとの動きが広がっていることに強い危機感を表明。「深刻な現実は、民族教育を強化する活動を力強く推し進めていくことをわれわれに求めている」と強調した。

 金委員長は民族教育を強化するための課題として、@朝鮮学校の生徒数増加A日本政府に朝鮮学校を正式に認めさせ、日本学校と同等の資格と助成を保障させるB民族学級の制度的保障――を挙げ、大阪朝高創立50周年を迎える今年、同胞が一丸となって民族教育の発展に力を注いでいこうと訴えた。

未来守るたたかい

 続いて北大阪朝鮮初中級学校教育会副会長でアボジ会会長の金致萬さん、中大阪初中オモニ会会長の金春実さん、大阪大学大学院生の文鐘聲さん、民族学級講師の朴正恵さん、泉州初級教員の高哲守さんが討論した。

 金致萬副会長は、教員に低い給与を払い、保護者に重い負担をかけ、教育設備も不十分な朝鮮学校の逼(ひっ)迫した運営の原因は、日本政府の閉鎖的な教育施策にあると非難した。

 「民族教育の権利を守る運動は民族、同胞社会、子どもたちの未来を守るためのたたかいだ。われわれが守らなければ子どもの未来も守れない」。金さんは朝鮮初中級学校に公立並みの助成を実施することを求めた日本弁護士連合会報告書の一文を紹介しながら、差別是正を勝ち取ろうと訴えた。

 民族学級の講師を30年務めている朴さんは府下にある160校の日本学校に民族学級が設置されているが、これは全体の10%に満たないと指摘。「9割の子どもが自分の民族のルーツに自信を持てずにいる」と、民族学級の制度的保障が急務だと強調した。

 民族教育府対策委は19日から一斉に朝鮮学校の処遇改善を求める署名運動を始める。朝鮮学校を正式に認め、私立並みの助成と資格を与えること、民族学級の制度的保障を求めることを求めた署名の提出先は文部科学大臣、大阪府知事、大阪市長だ。

 大阪第4初級オモニ会の千秀月会長(42)は、「今まで2度にわたって、20万人分の署名を集めたが、抜本的な解決をもたらせなかったのは世論を盛り上げられなかったからだと思う。行政や日本政府を追い込む空気を作っていきたい」と決意を新たにしていた。

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