大阪・朝鮮学校で一般授業公開

6月末まで14校で教科書開示、交流懇談会も


 「民族教育の発展・権利拡充のための大阪同胞集会」を機に、8日、大阪府下朝鮮学校の一般授業が公開された。地域の日本市民に朝鮮学校を知ってもらおうと、堺ハッキョの会、朝鮮学校を支える生野の会準備委員会、学校法人大阪朝鮮学園校長会と理事会による実行委員会が企画、主催したもの。大阪府、府教委、日朝友好促進府議会議員連盟などが後援団体として名を連ねた。府下、すべての学校(1高級、3中級、10初級の計108学級)が一斉に学校を開放するのは初めてのこと。今月末まで実施される(堺初級は3月に実施)。8日に大阪朝高と中大阪初中、9日に生野初級と東大阪中級で行われ、教科書の開示、児童・生徒たちの芸術公演のほか、保護者と学校関係者たちとの交流・懇談会も設けられた。

「払拭できた思い込み」、「生徒同士の交流も」(大阪朝高)

 大阪朝高の公開授業には、日本学校教員と生徒をはじめ、一般市民ら110人が訪れた。

大阪朝高(8日)

 授業のあと、芸術公演が行われ、金弘輝校長があいさつ。朝鮮学校は日本の学校教育法上、各種学校扱いされているためさまざまな制約が課されている実情に触れながら、「われわれが抱える問題に理解を示し、朝鮮学校を正式な学校として認めてほしい」と訴えた。また、9月に開かれる同校創立50周年記念行事にも足を運んでほしいと呼びかけた。

 民族教育、クラブ活動、生徒との交流――の3つのテーマで行われた交流会には、日本学校の生徒会にあたる朝高委員会の黄在明、李聖和さんら4人がパネラーとして参加。民族教育を受けながら感じてきた思いや感想を語った。

 芸術公演の司会を務めた李さんは、「朝鮮学校を知ろうとたくさんの方が来てくれて本当にうれしい」と述べながら、「自分が朝鮮人やと思う時は朝鮮語で意思を告げる時。民族を自覚するうえで言葉は大事だと思います。放送部に属し、洗練された朝鮮語が使えるよう努力しています」と語った。サッカー部員の黄さん。インターハイの府代表に選ばれた時、「大阪の恥」と言った日本人がいたことを伝えながら、「悲しかった。こういう話を聞くと、在日朝鮮人はまだ差別されているのかと感じてしまう」と率直な思いを告げていた。

 参加者の中からは、「生徒会の役員はどのように決まるの」「日本人に対してどういう思いを持っている?」「日本学校に通っている同じ同胞をどう思う?」などの質問が出され、これに対して朝高生らは「学費の問題もあると思うが、同じ同胞には民族教育を受けてほしい」などと答えていた。

 生徒を連れて同校を訪れた府立桃谷高校の朝鮮語講師、川上和美さん(37)は、「一人一人の表情を見ながら日本学校と同じ若者だと実感できた。このような機会があれば今度はもっとたくさんの生徒を連れてきたい。生徒同士の交流も実現させたい」と話していた。

 また感想文には、「外部の者を受け入れる生徒の姿勢がすばらしかった。思い込みを払拭(ふっしょく)することができた」「生徒の生の声が聞けてよかった。差別の体験を聞き胸が痛んだ」(いずれも中学校教員)などと声が寄せられた。

 大阪朝高が位置する東大阪市には府立の高等学校が多い。大阪朝高の教職員らは多くの日本市民らにアピールしようと、近隣の高校に出向き、公開授業への参加を呼びかけてきた。

「民族心培う姿に感動」、「知らないことが偏見生む」(生野初級・東大阪中級)

生野初級(左)と東大阪中級(9日)

 生野初級と隣接する東大阪中級の公開授業には、武井幸雄・生野区長をはじめ140人が訪れた。

 交流会では主催団体の朝鮮学校を支える生野の会結成準備会メンバーが、朝鮮学校関係者とともに交流会の司会を務めるなど、手を取り合い朝鮮学校への支援をアピールしていた。

 同会は昨年2月、同じ生野区にある大阪朝鮮第4初級の公開授業を機に結成。区内に3つある朝鮮学校を支援しようと、9月に正式に会を立ち上げる予定だ。

 メンバーの1人、山下直也さん(42、生野区役所勤務)は、「生野区は在日朝鮮人が多い割には理解が少ない地域。自分自身もそうだったが、知らないことが偏見を生んでいる。子どもを育てる日本人の親に朝鮮学校を見てほしい」と訴えていた。同じく同会のメンバー長崎由美子さん(45)は、「朝鮮学校の子どもたちが民族の誇りを育む姿は日本の子どもにも影響を与えるもの。互いを豊かにする交流、国際交流でもあることを知ってもらいたい」と話していた。(張慧純記者)

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