同胞の関心高める役割
結成1年の「下関ムジゲ会」メンバー座談会
昨年6月の結成から間もなく1年を迎える「下関ムジゲ会」。6月8日には障害児(者)、同胞高齢者らの現状と訪問看護についてともに考えて行きたいとの趣旨でパネルシンポジウムを開く(詳細別項)。会のメンバーに、この1年間の活動を通して感じたこと、シンポジウム開催への思いなどについて話し合ってもらった。(文聖姫記者、文責編集部)
大成功の音楽療法 ―この1年間の活動について。 崔玉貴 昨年9月に地域同胞や日本の養護学校先生らとともに焼肉を食べながら交流会を開いた。10月には、下関朝鮮初中級学校低学年の生徒たちと娘の仁愛が参加してミュージックセラピーを行った。ここに同席している、ミュージックセラピストを目指して勉強中の金由里さん(本人紹介別項)に来てもらった。また、年末には下関福祉フェスティバルに参加し、パネルを使って「ムジゲ会」を紹介した。通信もこれまで2号出した。 ―下関初中生徒たちとの交流について。 金由里 音楽療法とは、音楽を使って視覚、触覚、聴覚などを発達させていくリハビリの1つ。当日は円の中で手拍子リレーをしたり、布で波を作ったり、鈴を置いて移動させたりと、ゲーム感覚でやらせてもらった。会から参加したのは仁愛ちゃんだけだったが、生徒たちが自然に溶け込んでいくのを感じた。こちら側が望んだ反応がたくさん返ってきたので、音楽療法的にも成功だった。 崔 私事だが、仁愛のすぐ下の妹が初級部2年に通っている。その娘が幼稚班の時に1度仁愛を連れていったことがあるが、何人かに「手がない」などと言われたこともあって、「仁愛オンニ(姉さん)を連れてこないでほしい」と反応されたことがある。生徒たちと交流するにあたって、その点が心配で、仁愛を学校に連れていってもいいかと聞いたところ、「いいよ」という答えが返ってきた。それでも当日、学校に行くまでは心配だったが、子どもたちがとても歓迎してくれた。校門に入るや否や、「仁愛オンニ」と手を振ってきた。その中にうれしそうに手を振る娘の姿もあった。そういう家庭的な面においても、生徒たちとの交流はとてもよかったと思う。 金辰美 学校の先生や由里トンムがよく準備してくれた。だから、ミュージックセラピー自体もうまくいったし、仁愛ちゃんも上機嫌でとてもよかったと思う。生徒たちの姿を見て、幼児期に障害児と関わることの大切さを再確認した。だからこそ、その時だけで終わらせるのではなく、フォローが大切だと思う。子どもたちが帰って、この日の出来事を報告した時に親がどんなリアクションをとるのか、どう話すのかが大事ではないか。 韓朝男 福祉や障害者問題に関する良い教育の場になったのではないかと強く感じる。健常者の生徒たちが障害児を手助けする過程で、自分と区別するのではなく共に進もうという思いが育ったはずだ。幼いなりにも人格を尊重すべきだということを、身をもって感じたと思うし、障害者に対する偏見もなくなる。また担当教員が関心を持って、子どもたちをよく教育してくれた。先生たちの協力があってこその成功だ。今後、高学年や中級部、学父母らとの交流も徐々にやっていければ。 「自分の問題として」 ―会ができて良かった点は。 崔 障害児を持つ親のさまざまな思いを共有できる場ができた点が大きい。朝鮮新報を通じて、他地域の会の活動などが紹介されるたびに勇気づけられるし、お尻もたたかれる。年2回の全国交流など、会がなければそういう場所に参加する機会もなかっただろう。 金(由) 在日同胞の場合は、日本人の障害者を持つ家族と違う点があると思う。というのは、東京の会に参加してみて、自分の子どもに民族と接する機会を与えたい、朝鮮人としての関わりを持たせてあげたいという親の想いを強く感じたからだ。下関でも「ムジゲ会」がなければ、そういう場も与えられなかっただろう。これからも子どもたちにそういう機会をたくさん持たせてあげたい。 韓 結成自体に意味がある。やはり障害児を持った親同士でなければ本当の心境はわからない。話ができる場ができた。根強く残る差別と偏見の中で、子どもたちを外に出すことで見えてくるものがあるし、同胞社会にも少なからず影響を与えていると思う。 ―シンポではどういうことを訴えたいか。 韓 今回のシンポを準備する過程で、障害者問題だけでなく高齢者問題もテーマにすれば、より多くの同胞たちにも関心を持ってもらえるのではないかということになった。障害者、高齢者問題とも弱者の問題という共通点がある。健常者である人々が手助けしていこうという気持ちになれるような同胞社会を築きたい。健常者、障害者という枠ではなく自分たちの問題としてどこまでとらえてもらえるか、という問題提起ができれば。 金(辰) 息子の賢守はいま16歳だが、養護学校卒業後に社会に出た時のことをそろそろ考えなければいけない。現状は本当に厳しい。それでも例えば、同胞高齢者のデイケアセンターの横に作業所のような施設を作ることで、障害者の仕事もケアできる、といったことが実現できれば。そういう運動も会でやっていきたい。 韓 障害児を持つ親と健常者が同じ位置に立ってこの問題を考えていきたい。シンポが、少しでも同胞の関心を高めていく機会になれば幸いだ。 ◇ ◇ 座談会参加者=崔玉貴さん(40)、娘の姜仁愛ちゃん(10)が70万人に1人の難病「コルネリア・デ・ランゲ症候群」。 結成1周年記念パネルシンポ/6月8日、下関市民センターで 「楽しい時間を」/音楽療法士目指す 金由里さん |