多くの人と心通わせた9日間

在日同胞福祉連絡会 初の祖国訪問


 同胞障害者とその家族たちによる在日同胞福祉連絡会祖国訪問団(団長=申桃順・「ムジゲ会」会長、連絡会副代表)が1〜9日、朝鮮民主主義人民共和国を訪れた。視覚・聴覚・知的障害、自閉症、ダウン症、脳性マヒ、コルネリア・デ・ランゲ症候群などの障害を持つ9人の同胞障害者とその家族、スタッフら35人。同胞障害者が団を組んで朝鮮を訪問するのは初めてのことだ。訪問団は大マスゲーム・芸術公演「アリラン」を観覧したほか、平壌市、板門店などを参観。障害者や彼らを支援する「朝鮮不具者支援協会」とも交流した。(社会欄に関連記事、張慧純記者)

長年の夢

 訪問団が帰途につくため平壌を離れる数分前のこと。聴覚障害者の朴理紗さん(19、千葉県在住)は、宿泊先の平壌ホテルのロビーで手話で会話する青年を見つけた。

帰国したおばさんと念願の再会を果たした宋嶺幸さん

 そばにいた姉の瑠美さん(21)の手を引き、彼らに駆け寄る。胸の前で両手を上下に振った。手話で「うれしい!」。

 「名前は?」「いくつ?」。うれしさのあまり胸が踊り、ほおは紅潮、矢継ぎ早に質問が飛び出した。

 広島県在住の朴東煥、金寿男さん夫婦にとって、知的障害を持つ長女のスンミさん(28)と朝鮮の地を踏むのは長年の夢だった。朴さんは、スンミさんが幼少の頃から彼女を抱き抱え、朝鮮学校の運動会や同胞が集まる大会に連れて行った。家では朝鮮の歌を聞かせ、朝鮮の歴史をかみくだいて話す。民族教育を受けられないスンミさんが民族を身近に感じてほしいとの思いからだ。

 そしてやっと実現した祖国訪問。人なつっこい性格のスンミさんは、初対面の人であれすぐに駆け寄り握手を交わす。大好きな「じゃんけん」で多くの人と心を通わせた。

 朝鮮滞在期間、朴さん夫婦が驚いたことがある。部屋を出る時「ナガゲッスムニダ(出ます)」などと、スンミさんが日本では口にしなかったウリマルを話し出したことだ。

 「祖国で親せきや同胞と過ごした時間が精神的なゆとりを生み、刺激を与えたのだろう」(朴さん)。

理解の「一歩」

 平壌市内のスーパー。缶詰を陳列していた職員のパク・ジョンオクさん(25)は、横を通った姜仁愛ちゃん(10、山口県在住)の姿に驚きを隠せず作業の手を止めた。

 当時70万人に1人の確率と言われたコルネリア・デ・ランゲ症候群の障害を持って生まれた仁愛ちゃん。左腕は肘までしかなく、指は1本だけ。心臓や聴力の障害も抱え、発達も遅い。

 「生まれた時からこの姿だったのですか」。パクさんは母の崔玉貴さん(40)に質問をぶつけた。

 崔さんは原因不明の先天的な障害であること、また障害者を育てる同胞の家族同士、会を作って支え合っていることを伝えた。

 先天的な障害という点はうまく伝わらなかったが、崔さんは、祖国の人が娘の障害をストレートに聞いてきたことが理解の「一歩」につながると感じていた。

誠心誠意歓待

 福祉連絡会と交流した「朝鮮不具者支援協会」の職員が認めていたように、朝鮮では障害者が不自由なく暮らす環境が十分に整備されているとは決して言えない。

 しかし、朝鮮の人々は誠心誠意、同胞障害者たちを歓待した。率先して車イスを押し、歩行が不自由な障害者に手を差し延べる。また、サーカスや平壌学生少年宮殿での公演を観覧する時には特等席を用意。「アリラン」公演の際にはソン・ソッカン文化省次官が訪問団を激励に訪れ全員に握手を求める歓迎ぶりだった。

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