報告集会「特別永住者を対象とした日本国籍法改正案の企図」

在日同胞を抹殺する「新同化政策」

東京・中央大駿河台記念館 130人が参加


熱気につつまれた会場からは多くの意見が出された


否定化される教育などの民族権利

成立は絶対に阻むべき

 自民党を始めとする与党3党は昨年末、「国籍等に関するプロジェクトチーム」(座長=太田誠一・自民党衆院議員)を設置し、特別永住者に対する日本国籍取得手続きの緩和を骨子とする国籍法改正案を今国会に提出、成立させようとする動きを見せている。同化を前提とする同法案の狙い、背景などを検証し、どのように反対していくのかなどをテーマにした報告集会「特別永住者を対象とした日本国籍法改正案の企図」(主催=在日本朝鮮人人権協会)が6日、東京・御茶ノ水の中央大学駿河台記念館で行われ、130人が参加した。集会では、「日本国籍法改正案が出てきた背景と内容、その本質について」(任京河=朝鮮大学校教員、人権協会会員。生活・権利欄に全文)、「改正案と在日3、4世―排他的日本社会と在日同胞の国籍、民族性―」(姜誠=ジャーナリスト)の報告後、高英毅(人権協会会員、弁護士)、金昌宣(雑誌「イオ」編集長)氏が発言。最後に柳光守人権協会会長が今後も日本政府に対し、過去の清算をし、民族教育の権利を中心に同胞の民族性を保障する実質的な措置をとることを継続して求めていく、と強調した。

 集会でまず報告した任京河教員は、この時期、日本の政府与党がなぜ日本国籍法改正案を持ち出してきたのかについて、「外国人地方選挙権法案」に反対する保守勢力が提案、代替案として浮上してきたものだと指摘。

 また、一貫して在日朝鮮人の同化を主張してきた坂中英徳法務省名古屋入国管理局長の論文に照らし、改正案を掘り下げてみると、単に選挙権法案との引き換えだけを狙ったものではなく、在日朝鮮人の完全なる同化、法的同化を狙った「新同化政策」であることが明らかだと述べた。

 そして、「新しい歴史教科書をつくる会」の中学の歴史教科書が文部省の検定を合格するなど、日本の右傾化と改正案づくりは決して無関係ではなく、在日朝鮮人に日本国籍を与え、すべて同化させることによって、植民地支配の結果生まれた在日朝鮮人の歴史性と存在そのものの抹消を狙ったものだと指摘した。

 さらに任教員は、戦後補償をうんぬんするなら、まず朝鮮民主主義人民共和国政府を早急に承認し、その国籍を正式に認めるべきだと述べ、今後は、本国の国籍離脱義務を要件から削除し、重国籍を認めることも検討すべきだと主張した。

 ジャーナリストの姜誠氏は、これまでの帰化行政そのものが反人権的であったと指摘したうえで、「戦後補償の一環として同法案を改善するという言い方は、一見、個人に優しい法案のようだが、内実は、やはり同化政策であり、反対だ」と述べた。

 そして、「外国国籍を持って生きていくことを選択した人たちの権利は守られないどころか軽視され、さらに朝鮮系日本人という生き方すらも否定する法案だ」と強調しながら今後、同法案が成立すれば民族意識が希薄な3、4世らは容易に日本の国籍取得を選択するようになり、そうなれば民族的なコミュニティーは細分化され、民族教育問題などの権利を訴えても軽視されていくと主張した。

 姜氏は結局、同法案は日本国籍を持った日本人だけが日本国家を作っていくといった単一民族幻想をより強固にし、外国籍住民を排除して多文化共生の議論も避け、朝鮮人として生きる権利、民族教育の権利がつぶされていくだけで、成立は絶対に阻むべきだと指摘した。

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 報告に続いて、弁護士の高英毅氏が発言。在日同胞の制度的立場について法的な見地から、日本という国家の支配を受けるだけの奴隷状態にある、と指摘した。そうした状態に甘んじないでこの法案とどのようにたたかうかについて、同法案が「人権の見地に立ったもの」だという点を逆手に取り、こちらも民主主義のフィールドに立って、在日朝鮮人の問題を当事者を無視して勝手に決めるな、という主張をしていくべきだ、と述べた。

 金昌宣「イオ」編集長は、「今回の法案は、日本国籍か否かという二分法によって、日本に住む人々の法的地位を区別するという日本の国家意思を明確にしたもので、従来の日本の国民国家の思考方式だけが根底にあり、差別解消や権利保障につながるものではない」と述べた。

 また、国籍は現在、記号化しており、国籍と民族は別だという考え方に対し「それは居住する国がどのような政策を実施しているのか、母国とどのような関係を持っているのかによる」と指摘し、「日本でいわれる国籍取得は記号以上のものを強いる点、そうした中で、異なったものをなぜ同化しようとするのか、という点が問題だ」と述べた。

 報告後会場からは、巧妙な日本の同化政策の中で今後、民族的な運動をどのように展開すべきかを真剣に考えていくべきだなど、多くの意見交換が行われた。
(金美嶺記者)

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