国連・人種差別撤廃委

日本政府に差別解消勧告

チマ・チョゴリ事件など断固とした措置要求


 人種差別撤廃条約(別表記)の日本での順守状況を審査した国連・人種差別撤廃委員会は20日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で、審査結果をまとめた「最終所見」を採択。日本政府に対し、朝鮮学校卒業生の大学受験資格差別問題、朝鮮学校などで在日同胞の子どもたちが朝鮮語で教育を受ける権利が承認されていないことへの懸念を表明し、こうした差別的取り扱いを撤廃するよう勧告した。また、(チマチョゴリ事件など)朝鮮学校児童生徒に対する暴力行為とそれに対する当局の対応が不適切であることへの懸念も表明し、政府がより断固とした措置を取るよう勧告した。国連の条約機関が朝鮮学校および同胞児童生徒への差別を是正するよう勧告したのは、1998年の子どもの権利委員会、規約人権委員会(自由権規約委員会)に続くもの。日本政府の差別の論理が世界に通じないことが改めて明らかになった形だ。

 人種差別撤廃条約の各締約国政府は締結後1年以内、その後は2年に1回、条約の実施状況に関する報告書を国連事務総長に提出する。これをもとに、国連に設置された人種差別撤廃委員会が締約国政府代表と公開の場で議論しながら審査を行う。

 日本政府は同条約に95年に加入したにもかかわらず、それから5年経った昨年、ようやく2回分を一括した初の報告書を提出。今月8〜9日、初めての審査が行われた。

 世界各国の退職外交官や法律家ら16人が委員を務め、日本政府は外務、法務、総務、文部科学の各省から10人、ジュネーブの各国際機関代表部から7人が参加した。審査ではNGO(非政府組織)の情報も参考にされるため、在日外国人問題や被差別部落問題、アイヌ・沖縄問題などに取り組む多くのNGOが代表を現地に派遣し、政府報告書の不備を補うカウンターレポートを提出するなどのブリーフィングやロビー活動、審査の傍聴を行った。

 最終所見は序文、A「はじめに」(2項)、B「評価」(3項)、C「懸念事項および勧告」(21項)の全27項からなる。

 とくに委員会は最終所見で、人種差別を禁止するための立法を促した(第10項)。そして、人種差別を犯罪と規定し、いかなる人種差別行為に対しても権限のある国家機関を通じて効果的な保護と救済措置を利用する機会を確保するよう勧告した(第12項)。人種差別を禁止する立法および救済措置は、条約締約国の義務であるにもかかわらず、日本はこれを果たしていない。

 また委員会は最終所見で、石原慎太郎・東京都知事のいわゆる「三国人」発言を念頭に置き、「高い地位にある公務員による差別的な性格を有する発言」に懸念を表明。公務員や法執行官、行政官に対して、人種差別につながる偏見とたたかう目的で適切な訓練を行うよう要請した(第13項)。

 一方、第14項は「コリアン(主に子どもや児童・生徒)に対する暴力行為およびこの点における当局の対応が不適切であるとする報告に懸念し、政府が当該行為を防止し、それに対抗するためのより断固とした措置を取るよう勧告する」と、在日同胞児童・生徒への暴力事件を単独で取り扱った。

 また第15項は、日本政府が審査において、朝鮮学校などの外国人学校を正規の学校として認めない理由について、「日本における初等教育の目的は日本人をその社会のメンバーとなるよう教育すること」だからだとした立場に懸念を表し、人種や民族・種族的出身に関する差別なく、教育や訓練を受ける権利が平等に保障されるよう勧告した。

 さらに第16項は、「コリアン・マイノリティーに影響を及ぼす差別に懸念を表明する」と明示し、「朝鮮語による学習が承認されていないこと、および在日コリアンの生徒が高等教育の利用の機会に関して不平等な取り扱いを受けていることに懸念を表明」。日本政府に対し、「この点における在日同胞を含むマイノリティーの差別的取り扱いを撤廃」するよう勧告した。この「朝鮮語による学習が承認されていないこと」には、朝鮮学校が正規の学校として認められていないことも当然含まれる。

 ほかに、在日同胞と直接関連するものでは、帰化申請の際に日本名が強要される現状について懸念を表明し、「個人の名前が文化的および種族的アイデンティティーの基本的な側面であることを考慮し」、防止措置を取るよう勧告した。

 最終所見は、世界各国から選ばれた専門家らによる国連・人種差別撤廃委員会が「条約解釈の決定版」として正式に採択したもの。その意味は重い。これ自体に法的拘束力はないが、締約国政府には尊重する義務があり、日本政府の今後の対応が問われる。

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