公安調査庁の外国人登録原票違法調査事件
緊急集会の発言から

憲法違反、破防法乱用―法発動の要件そろわず

空野佳弘・弁護士


 今回の公安調査庁(公調)の原票入手は、明らかな憲法違反、破壊活動防止法(破防法)の乱用にあたる。外登原票は個人情報だが、憲法は第13条でプライバシー保護の権利を保障している。条文には国民とあるが、外国人にも日本国民と同様にプライバシー保護の権利が保障されることは、1969年の最高裁判決をはじめ数々の判例を通じて確立されている。この権利を国家権力が制約できるのは、それを必要ならしめるほどの重要な公共の利益がある場合に限る。

 このたび公調は、破防法27条の「公安調査官の調査権」を発動し、自治体から原票を入手したが、破防法を発動できるのは「団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った団体」が存在した場合と、「当該団体が継続または反復して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるとき」(第5条)、解散の指定(第7条)がある場合に限る。これらの要件が整った場合、初めて法律を発動できる。

 破防法は、国家が戦前の治安維持法、占領期の団体等規制令を利用して権力を乱用したことによる教訓から、2つの条文を設けてその乱用を禁じている(2、3条)。すなわち、同法を拡大解釈してはならず、憲法が保障する基本的人権、団体の正当な活動を制限するものであってはならない。これだけ厳しい要件がある中で、このたび公調が調査権を発動する十分な理由があったのか。つまり、原票開示の対象となった在日朝鮮人は破壊活動を行ったのか、また、今後もその可能性があるのかが問題になるが、そうではないことは明らかで、当然、破防法の乱用にあたる。

 これはまた、公安調査官の職権乱用にあたる。同法27条は、公安調査官は法が規定する範囲内において必要な調査ができるとしているが、完全にその権限を逸脱している。公安調査官が職権を乱用した場合、3年以下の懲役または禁固(45条)。公安調査庁、行政、入国管理局はその責任を果たさねばならない。

在日朝鮮人を治安視―公安への開示、日常化/田中宏・龍谷大教授

同胞、総聯の動向を把握―人権踏みにじる公調/洪敬義・近畿人権協会会長

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