消費低迷、厳しい環境
同胞商工人 どう打開?
ニーズとらえ独自性前面に |
危 機 感 持って 現状分析 |
積極的に セ ミ ナー 参加 |
同 業 者 と ネット ワーク |
I T で 経 営 効 率 アップ |
主要エコノミストがこぞって、景気浮揚は厳しいとの見方をするなど、先行きの不透明さが指摘される今年の日本経済。とくに消費低迷は、同胞商工人にとって生活に直結する問題だけに人ごとではない。同胞の商売は今年、どうなっていくのか。打開策は? 商工人の声をもとに分析してみた。(柳成根記者、関連記事)
続く「焼肉ブーム」 外食産業の市場規模自体は、2年連続で減少している。長引く不況によって、消費者が外食に多くの金額を費やさないためだ。その中でも、市場が着実に伸びていると見られているのが朝鮮料理店である。 朝鮮料理店に絞ったデータがなく推計にすぎないが、5千億〜1兆円産業とも言われ、その好調を支えているのが、若い世代を中心とした焼肉ブーム。健康ブームで唐辛子の効能がうたわれると、人気は焼肉からキムチやチゲ鍋に飛び火し、「激辛ブーム」を支える定番メニューとなった。 在日本朝鮮人商工連合会(商工連)関係者によると、昨今、高級店と低価格店の2極化が著しい。いわゆる「激安店」が、庶民の「焼肉は高くて…」という抵抗をなくした。「朝鮮風居酒屋」や「創作料理店」といった新形態も、若者層へのすそ野の拡大に大きく貢献している。 同胞の店舗もこうした波に乗ってきたが、消費低迷がささやかれる今年は、ブーム継続の一方で競争も激しくなると見られる。同胞業者は、この時代をどう生き残ろうとしているのか。 「独自性が必要」と語るのは、神奈川県相模原市で「和牛・焼肉ハウス笑福」を営む朴一賢さんである。 「この業界は、食べてもらってなんぼの世界。都心から離れているから売り上げが伸びないなど、言い訳にしかならない。味、価格、サービスなど他店との差別化に努力すれば十分やっていける。当店は『アットホームな温かい店』というコンセプトで打って出ます」 昨年の「朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座」に参加した東京「コリヤンハウス・楊」社長の尹楊太さんも、「勝ち組と負け組が、業界内で明確化してきている。多様化する現実を見据え、同胞も様々な形態の朝鮮料理ビジネスから学ぶべき」と指摘している。 製造業も状況は明るくない。好調な電気機器産業や情報技術(IT)関連産業が引っ張る形で、大企業がややプラスに転じたものの、中小企業は軒並みマイナス成長となっている。また、パチンコ業界も「大手参入で淘汰(とうた)が進み、また不況で融資もままならないとあって、非常に厳しい」(東京・足立商工会)現状だ。 都内でも同胞の中小製造業者が多い足立区では、「地場産業まではいかなくとも、ケミカルシューズ製造や皮革裁断業などが主要産業の一角を占めている」(足立商工会)。だが、消費の低迷で「物が売れない」昨今、下請の「町工場」は、格安で大量生産が可能な中国など外国へ受注を取られ、大きな打撃を被った。 「受注が来ないと仕事にならない。生活不安は常にあります」と、女性用ファッションバッグの革裁断を手掛ける姜益原・関原分会副分会長。「同業者も現状は一緒。消費が上向くのを信じて、仕事に励むほかない」と語る。 同胞商工人がこうした厳しい状況を打破するには、何が必要か。大切なのは、商工人自身が淘汰への危機意識を持って、「自身の商売の現状分析をきちんとする」(呉州棟・商工連商工部長)ことである。 具体的には、商工連や各地域商工会、青商会が主催する各種経営セミナーへの積極的な参加と、それを通じた同業者間のネットワーク作りが挙げられる。 インターネットなどを利用したIT関連事業を手掛ける同胞も少なくないが、「ネットで商売」に特化せず、既存の業種の経営効率を向上させるための「道具」として、企業間の電子商取引(BtoB)といったITを、自身の経営業態に即して使いこなすのも1つの手段だろう。 |