「厳しい環境、でも頑張る」

同胞商工人 新年の抱負


 個人消費が引き続き低迷すると予測されている今年、同胞商工人は商売をどう営んでいくのか。商工人の代表的な職種のうち、焼肉店、製造業、そして近年、大きな伸びを見せている情報技術(IT)産業の3つにスポットを当て、昨年の総括と新世紀の抱負について語ってもらった。(柳成根記者)

良質・安価・アイデア勝負
神奈川県相模原市「和牛・焼肉ハウス笑福」朴一賢さん(29)

 一昨年と昨年の売り上げを比べると、数字の上で大きく落ち込んではいないが、決して上向きではない。とくに、客が減っているのは強く感じる。

 相模原市には、都内に本社を持つ電気機器メーカーなど大手企業の工場が多いが、不景気で仕事の量が減れば、当然、ぜいたくはできない。残業の帰りに1杯、という人が目に見えて減った。財布のひもが固いと経営は厳しい。また、都心に比べて人口が少ない土地柄の影響も少なくない。

 今年の商売のポイントは、「価格を上げずに質を上げる」ことに置いた。

 昨年7月、叙々苑游玄亭(東京・新宿)で開かれた朝鮮料理講習会に参加し、客のニーズを捉えたメニュー作りのコツを学んだ。このご時世、値上げは絶対にできない。そうなるとアイデア勝負になるが、試しに1度、新メニューを作ってみたところ、売れたのは初めだけで、すぐに飽きられてしまった。やはり目新しさだけではなく、焼肉店は肉へのこだわりが必要だ。

 だが、和牛にこだわりたいが、そうも言っていられないのが現状。当店では、良質で格安の米国牛を使って単価を下げた若者向けのメニューも、1つの選択肢と捉えて導入している。

 景気は厳しいが、今、仕事がすごく楽しい。今後も、1年1年が勝負と思い、商売に励みたい。地元の常連客を大事にし、目配り、もてなしの気持ちは忘れないよう心掛けたい。

バッグ以外の取扱も構想
東京都足立区「吉田加工所」姜益原さん(52)

 女性用ファッションバッグの革裁断を手掛けているが、昨年は創業10年で最悪の年だった。一昨年までは、売り上げは上向かないまでも下がることはなかった。ところが昨年、受注依頼はほぼ半減した。

 原因は、昨年とくに顕著だった消費の低迷で、女性がバッグなどの商品を買い控えていること。もう1つは、人件費が安く大量生産が利く、中国など外国への受注が大幅に増え、国内の中小業者に仕事が回らなくなってきたからだ。これが大きな痛手となった。

 これを踏まえて今年どうするか。頭の痛い問題だが、何よりも、足立地域に多い同胞同業者が協力し、例えば受注依頼が複数入った業者が、少なかった業者に仕事を回すなど、互いに便宜を図りあって不景気を乗り切ることが第一だ。

 足立の製造業は全般的に低迷の傾向にあるが、ここで需要を伸ばすためには、互いに情報交換を欠かさず、力を合わせてこの産業を盛り上げていくことが不可欠だと思う。

 革裁断という産業は、今後、爆発的に伸びる可能性は低い。消耗品だけに消費の浮揚いかんによるからだ。ニーズの流れを捉えて新規顧客を獲得するため、バッグ以外の革製品も扱い、関連製品全般に手を広げることも構想している。

 朝銀の破たんで、同胞商工人の資金繰りは今後、難しくなっていくだろう。だが、朝銀は無くしてはならない大切な民族金融機関であり、商工人にとってはやはり頼りになる場所。私たち商工人と商工会も、破たんという事実はしっかりと捉えたうえで、今後、実質的に私たちの経営をどうしていくべきか考えなければならないだろう。

パソコンの楽しさ伝えたい
群馬県伊勢崎市「G・E・T」金智明さん(30)


 昨年1月の創業時より、代表らとともに経営に携わってきた。企業・店舗向け管理システム開発、ホームページ(HP)の企画・作成、県内3ヵ所でのパソコンスクールという三つの事業を展開している。今月末か来月には、会社としての登記申請が受理され、本格的にスタートを切る。

 昨年は正直、かなり厳しかった。IT関連産業は確かにブームだ。当社へもシステム開発が3件ほど、HP作成も40〜50件ほどの依頼が来た。だが、入学金やテキスト代などを当社で全額負担していることや、設備投資がかさんだ分、元を取るには仕事はまだ足りない。消費の低迷を肌で感じている。

 今年は、ITへのニーズに即してシステム開発の分野に力を入れ、同業者との情報交換にも努めたい。

 パソコンスクールについては、現在、前橋と太田の両教室の受講生は全員、地元の同胞だ。40、50代以上の年配の方が増えている。昨年9月の群馬朝鮮初中級学校創立40周年記念行事のお手伝いをさせてもらい、同胞との触れ合い、地域の同胞社会に携わる大切さを感じた。今後も、同胞が楽しみながらパソコンを覚えていけるよう、持てる力を尽くしたい。

 ゆくゆくは、群馬同胞のネットワーク構築にも一役買いたいという夢を持っている。

日本語版TOPページ