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 新聞報道を読んで、怒髪天を衝いた。誰に? 「北鮮」という暴言を吐いた石原慎太郎都知事にである

▼「北鮮」という言葉は、「鮮人」「日鮮」「内鮮」と並んで、1910年の日本の朝鮮植民地とともに生まれ、「大日本帝国の植民地支配下にあり、民族国家として独立できない気のどくなだめな人々」という意味をもつ。排外主義的な蔑称語として使われてきた。現時点において、「北鮮」をそのまま使ったことは、朝鮮を国家として認めまいとする意図を露骨に示したものだ

▼「三国人」というあからさまな差別語を亡霊のように蘇らせたのは、南北首脳会談の開催が決まった4月8日の翌日。一方、「北鮮」は首脳会談以後、朝鮮が積極的に国際舞台に進出している時期に出た

▼これらの発言は、朝鮮の統一はあってはならないし、朝鮮はずっと世界から孤立した「劣った国」であってほしいという石原氏の排外主義的な心情から出たものと、断じざるを得ない

▼彼の父・石原清は戦前、アジアの植民地支配で「活躍」した山下汽船の重役だった。東大の姜尚中教授によると、1905年の日露戦争から第2次大戦を通じて、神戸と小樽、湘南を拠点に新興財閥として肥え太った船会社だという。つまり石原知事は、アジアへの植民地支配を内面化して大きくなった人物だ

▼沖縄生まれの芥川賞作家・目取真俊(めどるま・しゅん)さんは言う。「…このようなファシストまがいの暴言とその背後にある狙いを許してはならない」(「石原都知事 『三国人』発言の何が問題なのか」影書房)。(舜)

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