2000年版中小企業白書の概要(上)

IT革命/ネット活用で経営活性化


 中小企業庁から4月に発行された「2000年度版中小企業白書」。今回の白書の大きなポイントである、@情報技術(IT)活用の実態A創業の活性化B金融システム不安の影響と改革戦略――の3点を中心に、白書の概要を2回にわたり紹介する。

関連投資は計画的に

 コンピュータの高性能・低価格化や、通信回線の高速・大容量化といった情報技術革新「IT革命」は、中小企業にもネットワーク活用の機会を広く提供するとともに、企業間の競争環境を大きく変化させている。

 ITは、新たな経営への挑戦を後押しする道具、新たなビジネスチャンスをつかむ道具を提供するというプラス面と、従来とは性格の異なる新たな競争に直面し得るマイナス面を併せ持ち、そのインパクトは大きい。中小企業への影響は今後も強まるだろう。

 ITがもたらすマイナスの影響を最小限に抑え、プラスのインパクトを最大限に活用するため、中小企業も何らかの行動を起こす必要がある。だが、必ずしも今すぐに、多額の情報システム関連投資を行う必要性はない。

 明確な目的を持たないまま行う投資は、経営成果にはマイナスになり得る。単に投資をすれば良いのではなく、逆に安易な投資に陥ることなく、現時点での自社のレベルや周囲の環境を見据えながら、冷静かつ計画性をもって対応することこそが必要だ。

 最近では、優れた情報技術を活用しながら、経理など様々な業務を請け負うサービスを提供する事業も発達しており、自社で情報機器を導入するのか、業務ごとアウトソーシング(外部委託)するのかという選択も重要になっている。

パソコン普及6割

 中小企業のIT機器導入の現状を見ると、パソコンが六割(経理、給与管理、在庫管理など)、電子メール六割、インターネットのホームページ(HP)4割、インターネットによる企業間ネットワーク2割、CAD/CAM(コンピュータによる設計)が製造業の1割などとなっている。中でもHPは、今や無数に存在しており、単に商品カタログを載せるだけでは、情報発信としては不十分になってきている。

 安価でオープンなシステムであるインターネットは、経営資源が限られる中小企業にとってはネットワーク化への主要な手段になり得る。HPを通じて顧客とのコミュニケーションを充実させる仕組みを作ることで、既存の顧客との関係強化や新規顧客の獲得に成功している中小企業も多い。

 ネットワークを通じた情報交換の主流は、今は電子メールだが、いずれは音声メールや動画送信も普及が予想される。モバイル(携帯情報端末)機器の導入で事務所外とのネットワーク化を図り、営業や物流管理の刷新を実践し、成果を上げた企業もある。

 革新スピードの速いIT分野は、アイデアや技術力があれば創業間もない中小企業でも活躍できる分野である。情報システム関連投資を考える際には、新技術や新製品の動向を見つつ、戦略的に判断することが大切だ。

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