同胞焼肉店も「個性の時代」へ

東京で「繁盛店見学会」


味・価格・サービス 食べてチェック
失敗しない経営学んだ 

 繁盛店の経営スタイルから、同胞飲食店の経営に生かせるヒントを得ようという「繁盛店見学会」(主催=東京同胞飲食業経営者協議会)が17、18の両日、都内で催され、多くの同胞経営者が参加した。

 大手フランチャイズチェーンの出店攻勢と低価格競争の激化により、飲食業界では「勝ち組」と「負け組」の2極分化が進み、同胞飲食店、とくに焼肉店は厳しい経営を余儀なくされている。同胞経営者が集まって繁盛店の「繁盛する理由」を考察し、自店の経営に生かそうというのが、見学会の趣旨だ。

 訪れたのは都内のある焼肉店。駅前の好立地を生かし、OLなど若年層にターゲットを絞った低価格戦略を取っており、インターネットのレストランランキングで1位にもなっている。参加者は一般客として実際に食べ、価格や味、接客、店内の雰囲気などをチェックシートに記入、それをもとに意見を交換した。

 参加者は、とにかく1つでも多くの味を確かめようと、肉類はもちろん、キムチや野菜類、飲み物、デザートに至るまですべて試食。メニューの書き方や値段の付け方、従業員のサービスなどもこと細かくチェックした。

 試食を通じて参加者に突き付けられたのは、「味はそこそこ値段が安ければ客は来る」という、味にこだわる同胞経営者には驚きの現実だった。集合場所に戻ってのディスカッションでは、同店の評価をめぐって議論が白熱した。

 肝心の味については、「カツオだしを多用した日本人向けの甘めのタレ。日本人には合っても同胞の口にはどうか」「肉も低レベルでまずい。格安を保つためとはいえ、この質でなぜ客が入るのか分からない」と辛らつな意見が相次いだ。
  それでも客足が遠のかないのは、「価格の安さと清潔感ある内・外装という、徹底的な若者志向が顧客に受けたから」というのが、一致した感想だ。

 とくに価格については、「『ユッケ半額』など値引率をメニューに載せるのは有効。価格の持つ訴求力を実感した」(荻窪「四季の家」の金正博さん)、「何かが突出しているのではなく、平均点を維持している。失敗しない経営をよく勉強している」(荒川「正泰苑」の金日秀さん)といった声が相次いだ。

 同業者だけあって、好評・批評が入り交じる率直な意見が飛び交ったディスカッション。見学に訪れた店の低価格戦略を、批評しつつも認めざるを得ない現状で、「安さも個性の1つ。同胞飲食店もより個性を追求すべき過渡期に来ているのでは」というのが本音のようだった。

 初めて参加した大田「梨苑」の金長徳さん夫妻は、「焼肉一筋30年、味には自信を持ってきたが、故に味以外の要素に視点を移すことができなかった。繁盛店に人が入る理由を知りたくて参加したが、とても参考になったし、今後の経営に意欲が沸いてきた。従業員教育など、すぐに改善できる部分は実行したい」と、感想を語っていた。

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