私の会った人

上野千鶴子さん


 フェミニズムの論客として知られるが本来の専門は、理論社会学。社会の構造を解明する抽象的な理論研究で「オンナのオの字も出てこない」領域だ。

  一方で「資本制と家事労働」、「女という快楽」などの著書を次々に送り出し、女性論ブームに火をつけた。この10年程の間に出版した本は四十数冊にのぼる。

  「ほとんど泥縄でやってきた。すぐれた編集者のおかげだと感謝している。私の仕事は1回勝負のようなもので、失敗すると後がない。仕事の曲り角にはいつも彼らとの出会いがあり、新しい舞台にたたせてくれた」

  幅広い仕事の源は人一倍の好奇心。未知なものに「心もからだも惹かれる」と、もう走り出す。90年代半ばに、ドイツに滞在して「世の中を複眼的に見る眼を、また1つ獲得して帰ってきた」。

 そのドイツでもっともショックを受けたのは、「戦争体験へのドイツ人の敏感さと日本人の鈍感さ」ということだった。
 戦後のドイツは、教育のなかで徹底的に戦争の加害者であるということを教え、その責任を明確にした。

 1948年生まれ。戦争を知らない世代である。
 ドイツで気づかされるまでは、本当に無知だったと率直に語る。

  「朝鮮では日本による戦争被害者の数を600万人と公表しているが、アジア全体の犠牲者は2000万人以上になるでしょう。戦争というものが高くつくかを分からせるためにも、日本政府に対してトコトン賠償請求をしていくべきだと思います」(粉)

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