科協中四国主催で講演会
あと1歩、朝鮮西海の原油探査
出るか石油100年分/「採算取れる」 権威が太鼓判
南北最高位級会談の成功で、朝鮮半島経済にも新時代が開けそうな気配だが、気になる問題の1つとして、朝鮮西海の石油開発がある。地質学の世界的権威で、朝鮮原油工業部の顧問を務める崔東龍博士(オーストラリア在住)が在日本朝鮮人科学技術協会中四国支部の招請を受けて来日。先月末から今月初めにかけて、中四国の同胞を対象に講演した。その内容をもとに、展望と課題を整理した。
平壌は油の上 1昨年の10月、金正日総書記と平壌を訪れた鄭周永・現代グループ名誉会長との間で、こんな会話が交わされたことは記憶に新しい。総書記は、膨大な調査資料も示したと言われる。 朝鮮西海で行われている原油探査 では、「油の上に乗っている」というのは具体的にどういうことなのだろう。 朝鮮には原油埋蔵地が7ヵ所あると言われるが、最も有望視されているのが平壌に近い南浦の沖合、西朝鮮湾盆地だ。 石油は、陸上や水中の生物の遺骸が水底にたまり、地下に埋没。1000メートルから2000メートルの深度で高温にさらされながら、石油、ガス、水に分かれる形で生成される。これが地中で移動し、一定の厚みをもって貯留されることで、採掘が可能になる。 西海の特徴としてはまず、海底の地中に、原油を生成する有機物を多量に含んだ堆積岩が、1000メートルから7000メートルの厚みをもって存在している。これはジュラ紀に溜ったもので、中国の海域に比べても格段に厚いらしい。 そして、石油が貯留されるためには、石灰石など空隙の多い「貯留岩」と、たまったものがそれ以上移動しないようフタの役割をする「帽岩」からなる構造が必要だが、西海海底の地中にはそれがいい具合にできているという。しかも水深が浅く、石油の貯留も一定の高みに達しているため、採掘にも有利だそうだ。 石油生成量については、崔博士の見解もほぼ一致しており、カナダの企業も同様の分析結果を出したといわれる。可採埋蔵量についてはより詳細な調査を要するようだが、崔博士はこの点でも、「商業的に価値ある量があると確信している」という。 では具体的に、100億バーレルとはどの位の量なのか。 崔博士の知るところでは、朝鮮の年間石油消費量は300万トン。今より経済が順調だった10年前は600万トンくらいだったという。 100億バーレルは、重さに変えると、16億トンに達する。ということは、朝鮮だけで使えば260年以上ももつことになる。話半分で可採埋蔵量が50億バーレルと見て、南北朝鮮で共に使うとしても、半世紀分はあるということだ。 数年前に南浦沖でボーリングを行った際には、日に450バーレルの産油があったが、採算ラインは日産2000〜3000バーレルだそうだ。西海にもそういうポイントがあるはずなのだが、確定するにはより高度な細部探査と解析が必要だ。それを阻んでいるのは、ほかならぬ資金難だ。 崔博士によると、今後の開発事業は第1段階で細部探査、第2段階でボーリング、第3段階で生産準備、という具合に進む。 「せっかくの朝鮮の油田なのですから、後々の利益の確保のためにも第2段階までは何とか自力で行い、メジャーなどを呼び込むのは生産段階にすべきです。朝鮮には優秀な科学者やボーリング技術がそろっており、資金さえあれば可能でしょう」 当面の細部探査には、3億円の資金を要する。現在、原油工業部傘下の貿易会社と提携している東京の同胞企業「ペトレックス」(TEL03・5281・8541)が窓口となり、投資を募っている。朝鮮の経済を浮揚させるカギともなり得る問題だけに、ぜひとも突破口が開かれて欲しいものだ。 (金賢記者) 【崔東龍博士プロフィール】 1945年東京生まれ。北海道大学理学部地質学科卒業後、マイアミ大学ポストドクター・準教授、オーストラリア国立地質調査所上級研究科学者などを歴任。現在、(株)レアックス・オーストラリア代表 |