1世の鼓動−統一への想い (4)

「コリアタウン」の親子3代/大阪の宋東述さん一家(下)


世代違えど「願いは統一」
「南北橋渡しを」孫に期待のエール

 大阪市生野区に住む宋東述さん(73)は、孫娘の宋和映さん(13、東大阪朝鮮中級学校2年)の話になると顔をほころばす。「歴史的な握手を見て民族の血が騒いだのか、しきりに『ハルベ(おじいさん)、故郷に行けるよ』と言ってくるんですよ」。

 和映さんは教室のテレビで、金正日総書記と金大中大統領の対面を見た。校内では「おーっ」という、どよめきに似た歓声が上がった。

 「(教育会管理部長の)1世アバイ(おじさん)が涙を流して喜ぶのを見て、胸が熱くなった。統一は遠くない、早く実現すればいいなと思いました」。日本で生まれ育った3世の和映さんは、祖国訪問の経験がなく、祖国や統一という言葉も今1つピンと来なかったという。だが、祖父やアバイらの姿を見て、彼女なりに「統一」の実感が強烈に沸いたようだった。

 学業の傍ら、和映さんが打ち込んでいるのは、2歳から始めたピアノ。6月30日の在日朝鮮学生中央ピアノコンクールで金賞に輝くなど、立派な実績を誇る。ピアノを職業として一生がんばりたいと語る彼女の夢は「(統一した)祖国で演奏すること」だ。こうした、若者のなかに芽生えつつある祖国への思いを大事にしてあげなければと、東述さんは思う。

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 宋家では週末の夜、必ず長男と次男の一家を含む総勢11人が1つの食卓を囲む。次男で和映さんの父、宋亀さん(47)宅に集まることが多いようだ。コンピュータ専門学校などで教べんを取る亀さんは、日本の工学博士と共和国数学博士の両称号を併せ持つ、数少ない同胞科学者の1人だ。

 「統一したら両親を故郷に連れて行き、祭祀(チェサ)もさせてあげたい」という亀さん。

 2世という立場から、1世の両親の喜ぶ姿に感じるものは大きかった。「アボジ(父)は常々、 体は日本にあるが心は故郷に残してきた』と口にしてきた。生まれ故郷を離れて苦労してきた背中を見ているだけに、会談のシーンに喜ぶ姿を見るのは息子として率直にうれしいです」

 一方で、和映さんには、「同世代の日本人には負けない子に育ってほしい。ゆくゆくは、祖国と統一に寄与する人材になってくれれば」と期待を込めてエール。そして、自身は「教育者の立場から、教育の分野で祖国の発展に携わりたい」と語る。

 60年の日本での生活で忘れかけていた故郷の「過去」を取り戻したい東述さん。今「現在」の祖国の発展に寄与することで、次の世代につなげたいという亀さん。好きな音楽を通じた南北の橋渡しを夢見る「未来」志向の和映さん。1世、2世、3世と、世代の差、目標の違いはあれど、そこに共通するのは「統一」の2文字にほかならない。
(柳成根記者)

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