ざいにち発コリアン社会
民族学級「ポンソナの会」
−大阪市立住之江小学校−
民族文化に早く触れるほど子どもたちは素直に体得
本紙既報のように(6月28日付)、日本で最も多くのコリアンが住む大阪府内には、民族について自然に触れ楽しみ、そして学ぶ場として、民族学級が日本の小中学校170ヵ所に設置されている。大阪市立住之江小学校を訪れ、同校で運営されている民族学級を取材した。(羅基哲記者)
週1回、金曜日放課後に/本名で進級、親に教える子も 住之江小の民族学級は、92年に開校した。名称は「ポンソナ(鳳仙花)の会」。毎週金曜日の放課後に開かれ、現在、対象者の約8割に当たる15人が学んでいる。 講師は、3年間ここにいる金仁淑さん(27)。 チャンゴを叩く高学年の授業 授業中、子供たちはみな、本名あるいは民族名(父が日本人で朝鮮人の母方の姓を名乗った場合)を名乗る。授業は、ハングルの歴史や日本と朝鮮のつながり、文化などを解説した市教育委発行のムジゲ(虹)とチュモニ(袋)を参考に進められている。 金さんは、「民族文化に触れるのが早ければ早いほど、子供たちは民族的情緒を素直に受け入れる」と語る。 4年生のある女生徒は2年進級時、「ポンソナの会」で学ぶことを自らの意思で決めた。女生徒の母親は、「私が彼女の祖父母をアボジ、オモニと呼んでいるので、自分の体にはコリアンの血が流れていることに薄々、気付いていたのでしょう」と話す。 女生徒の父は日本人だが、母は日本学校出身の在日コリアンで、結婚を機に日本に帰化した。子供の国籍は日本だ。 「自分が小学校時代、コリアンということで民族差別と偏見を受けたため、子供が民族学級で学ぶことに不安を感じ、2年間欠かさず学校まで迎えに行っていた。だが、民族差別を恐れてチマチョゴリを1度も着れなかった私たちの学生時代とは違い、民族学級の各種イベントで子供たちは晴れやかに民族衣装を着ている。安心して学べる環境が整っている。民族のことに関しては、彼女が先生、私が生徒です」(女生徒の母親) この家庭では子供の意思を尊重して、日本と朝鮮、双方のことを学ぶことに大きな理解を示している。 一方、学校側は、一般の生徒を対象に、朝鮮文化などについて学ぶ授業を設けている。 中田圭治校長は、「日本の子にとっては朝鮮を知り在日コリアンについての認識を深める機会となり、民族学級で学ぶ子にとっては民族について日本人生徒に教える場となっている。相互理解が深まっている」と述べていた。 前述の女生徒は、「ポンソナの会」で学び始めて2ヵ月後、朝鮮語のあいさつの仕方をクラスで教えたのを機に、コリアンとしての自覚が高まったという。 民族学級受講生のなかには、本名を名乗って進級する子もいる。 【受講生とOBの声】 在日のルーツ知る/帰化はいや/高校からは本名/誇りもって生きたい 「ハラボジやハルモニはハングルは書けないけど、しゃべることはできる。でもアボジとオモニはしゃべることもできないし、書くこともできない。このままだと、私たちの子孫は書いたりしゃべったりできなくなるだけでなく、自分のルーツさえも知らなくなったしまう。だから民族の証である言葉を学びたかった」 「将来、家族の考えで、帰化するかもしれない。めっちゃいやや。今まで、がんばってきたことがかき消されるような感じだ。高校に行ったら、在日コリアンの子たちが集まる場もある。1人でも話ができる仲間を見付けたい」 「本名と通名があるが、帰化しない限り私の名は本名でしょう。日本社会のなかでは差別や偏見があるかもしれないが、通名で生きることは、名前を恥じることかもしれない。だから高校からは、本名で通う」 「学校に民族学級があったことで、アボジがコリアンであることを知るとともに、民族の文化にもふれ、『民族』について考えることもできた」 「日本社会でコリアンとして生きていくうえで、16歳になって直面するのが外国人登録証明書の問題だ。民族学級で学んだので、誇りを持って生きていきたい」 (大阪府民族講師会「教育研究集会」資料集より、2000年3月) 大阪市、2割の公立校に民族学級 大阪府下の民族学級は、1972年に発表された「7.4南北共同声明」の精神に基づき始まった「72年型」と、48年の「4.24教育闘争」後に設置された「48年型」と呼ばれる2つの形態がある。9割が前者だ。名称は各学校によって異なる。大阪市では市教育委の指導のもと、約2割の公立学校で運営されている。講師はウリマルができ、朝鮮の歴史や風習に明るい民族学校教員など在日コリアンが担当。 授業は小学校低・高学年、中学生に分かれて週1回、放課後、課外授業の形態で行われている。以前は誰が学んでいるのか、外部に知られないよう教室のカーテンを閉め切って授業を行ったりしていた。年度末の芸術発表会も、コリアンということが知られてしまうという理由で、出演を拒否する子もいた。しかし現在は、コリアンをアピールできる場として受け入れられている。 低学年は本名の呼び方や書き方、朝鮮の歌の修得を通じて自然にコリアンであることを自覚できるように、高学年では朝鮮の歴史や社会学習を通じて自己存在にかかわる要素を、中学校では外国人登録法の問題など生活において目に見える課題について学んでいる。受講生は、「朝鮮・韓国籍」の子どもよりも、国際結婚、「朝鮮・韓国籍」離脱による日本国籍取得(帰化)者、「ニューカマー」の子どもたちが大きなウェイトを占めつつある。 |