朝鮮人道支援国際NGO会議
継続的な支援を/各国の実務者、強く訴え
「DPRK(北朝鮮)人道支援国際NGO会議公開シンポジウム―市民・NGOが開く北東アジアの明日」(主催=同実行委員会)が2日、東京・渋谷区の日本青年館で開かれ、対朝鮮支援活動に従事する国連機関、世界各国のNGO(非政府組織)の関係者を中心に、在日同胞、日本市民ら200余人が参加した。シンポでは、これまでの支援活動や朝鮮の現状、今後の課題などが報告された。(パネリストの発言)
【支援の現状】 朝鮮政府は最初の大水害が起きた直後の95年8月、赤十字会中央委員会を通じて国際赤十字に被害状況を通報し、緊急援助を要請した。 その直後、国連人道問題調整局(OCHA)、世界保健機構(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、世界食糧計画(WFP)、国連食糧農業機関(FAO)など国連関係機関の合同調査団が朝鮮に入り、全農業用地の4割近くにわたって視察を行った後、詳細なレポートを作成して支援体制に入った。以来、上記の国連機関のほとんどは平壌に常駐代表を置き、活動を行っている。 さらに95年末までに欧米、日本や国際的なNGOが現地入りして支援活動を開始。国連機関と協力しながら活動を続けている。 そして現在、WFPは現地採用も含めて百数十人の人員を置いている。ほかにも6つの国連機関、世界の8つのNGOから合計40〜50人が平壌に常駐しているという(日本、南朝鮮はなし)。 一方、複数の非常駐NGOは96年、平壌のWFP事務所内に食糧援助リエゾンユニット(FALU)を設立し、FALUを通じた支援活動を行っている。 WFPは現在、朝鮮に全211ある郡のうち、162の郡に立ち入りを許されており、物資の配給やモニタリング、協力活動を行っている。平安北道・新義州、両江道・恵山、咸鏡北道・清津、咸鏡南道・咸興、江原道・元山には現地事務所もある。 今回、シンポに参加したカリタス・インターナショナルのキャシィ・ゼルベガーさんは95年以来、27回訪朝してすべての道を回ったと報告したが、多くの外国人が朝鮮で現地の人と協力しながら活発な支援活動を繰り広げている。 【現地の状況】 朝鮮の食糧難は95年の大水害から始まったとされている。ソ連・東欧の崩壊による社会主義市場の消滅によって経済が弱っていたところに自然災害が追い討ちをかけたのだ。水害は95〜97年まで続き、98年以降は毎年干ばつに襲われている。 しかし、95年からの国連機関、各国政府、NGOの支援と朝鮮政府、人民の自助努力により、99年以降、最悪の時期は脱したとされる。今回、シンポで発言したUNICEF朝鮮代表のカーン博士は、99年からは回復への新たな段階に入ったと指摘した。 直接的な食糧の支援と同時に、種子や肥料の提供、技術協力も受けながら、2毛作の導入など農法の研究や農業構造の改善、家畜の増加などが進み、食糧事情は改善への兆しが見えてきた。薬品や子供用の栄養強化ビスケットを生産する工場も各地で稼働を始めている。 医療・保健の面でも、すべての子供がはしか、ポリオの予防注射を受けられるようになった。UNICEFでは2000年末までにポリオの根絶を目指しているという。安心して飲める飲料水の確保も進み、現地の関係者の間で医療に関する知識や技術の向上もはかられた。結果、子供や妊婦の死亡率、栄養失調の子供の数も減ったという。 しかし、まだ安定した回復とは言えず、継続した支援が必要とされている。国連機関と各国NGOの関係者たちはそれを強く訴えていた。 【今後の課題】 実際、多くの国連機関、NGOは、食糧物資の支援と共に農業技術支援や食料品生産、医療技術指導など多彩なプロジェクトを実施している。 例えばWFPは数ヵ所で子供用の栄養強化ビスケットと薬品を生産する工場を稼働させており、UNICEFとWHOは現地の医療関係者の指導を行っている。またキノネス氏(元米国務省東アジア専門分析官)によると、彼の所属する米国のNGOマーシー・コープスは、本部のある米オレゴン州農業局の専門家2人を朝鮮に派遣し、朝鮮から5人をオレゴン州に招いて研修を行う予定だ。モデル農業も作る計画だという。 今後、より大規模なインフラ開発などを行っていくには、各国の政府レベル、経済界の支援が不可欠で、その意味からも距離的に近く利害関係の密接な日本、南朝鮮への期待の声が出ている。 しかし、いまだ国交もなく、反朝鮮感情の世論も根強いことから、日本の支援は消極的なのが現状だ。キノネス氏は日本を念頭に、「もう朝鮮に脅威はない。脅威は支援を行わない理由にならない」とまで言っていた。世論対策、そして国交のない条件のもとでいかに効果的な支援が行えるか、アイデアを絞ることが日本NGO最大の課題となろう。もちろん、政府レベルの支援も拡大すべきで、国交正常化を急ぐことも大切だ。 南では、NGOが地道な支援を呼びかけてきた過程で、北も同じ同胞だという気持ちが社会的に高まってきたという。先日の南北首脳会談により、そうした意識はより強まった。南朝鮮の政府、NGO、企業がうまく役割分担をして連携を取りながら、国際的な支援活動のなかにおいてプレゼンスを拡大していくことが期待されている。 |