近づくグローバル化の波

南の自動車産業、外資交え激震
ねらうはアジア巨大市場


 南朝鮮の自動車産業が、大きく動いている。97年の通貨危機に端を発した業界再編が大詰めを迎え、グローバル化の本格的な幕開けが近づいているからだ。また南北和解の機運は、アジア経済に新たなインパクトを与える可能性をはらむ。朝鮮半島を洗うグローバリゼーションの波を見る。

フォード、ルノー、ダイムラー
北は平和と合併、フィアット車を生産

● 三つどもえ

 6月13日午前、金正日総書記と金大中大統領が劇的な対面を果たした同じ頃、三星自動車の釜山工場では、経営破たんした同社を買収する仏ルノーのシュバイツァー会長が、年産50万台構想をぶち上げた。

                                                                               大宇買収の入札にのぞんだ
                                                                           フォードのデビット・スナイダー専務
                                                                                     
(南朝鮮新聞から)

  三星釜山工場は現在、月産4000台。目標はその10倍を上回る野心的なものだ。20日には、資本提携先の日産自動車社長に、ルノー出身のカルロス・ゴーン氏が正式に就任。同社のアジア戦略は、準備万端の観がある。

 しかしながら、やはり経営破たんした大宇自動車の買収合戦の前では、ルノーの動きすら小さく見える。

 再編のメインイベントとも言える大宇買収には、米ゼネラルモーターズ(GM)と伊フィアット、ダイムラークライスラー(独・米)と南の現代自動車がそれぞれ企業連合を組んで挑み、米フォードは単独で名乗りを上げた。

 

入札のため南を訪れたファイアット経営陣

 三つどもえのたたかいは、6月26日に入札が行われた結果、7兆ウォン(約7000億円)を提示したフォードが、ライバルを遥かに引き離し、まずは優先交渉権を獲得した。

● 合従連衡

 フォードのアジアでの販売シェアは、5.2%で現在7位。23.8%でトップを走るトヨタはもちろん、スズキなどを含むGM(18.4%)、現代や三菱と資本提携しているダイムラー(16.1%)には遠く及ばない。それでも、大宇買収に成功すればシェア8.6%で4位に浮上し、ルノー・日産連合やホンダを上回る。

 世界の自動車産業にとって、中国、インド、インドネシアなど人口大国を抱えるアジアは、最後の成長市場と言われる。ここでのシェア獲得は、世界規模の競争で勝敗を決する要素にもつながりかねない。

 合従連衡も目まぐるしい。南の企業でひとり躍進を続ける現代は、インド市場でも健闘。これを追撃しようと、大宇買収ではライバルのフィアットとフォードが、エンジン生産での協力を検討中とされる。

● 北に進出

 今年2月、南の平和自動車と、北の政府傘下の事業体の合弁会社によるプロジェクトが始動した。南浦に自動車組み立て工場を建設し、フィアットの乗用車をライセンス生産するというものだ。投資総額は3億ドル。2001年を目途に生産を始め、中国、ロシア、東南アジアなどに輸出する計画とされる。

 実はフィアットと平和は、すでに似たような事業の実績がある。フィアットはベトナムに、合弁子会社メコン・カンパニーを持ち、同社は数年前に平和から資本参加を受けた。

 また、南の月刊誌「マル」のレポート(要旨別掲)によると、工場の着工式に参加した金容淳朝鮮労働党書記は、「15年以内に『世界的に質の高い車を作る国は共和国』と言われるようにしたい」と述べ、「自信がある」とまでつけ加えたという。

 プロジェクトが成功するかどうかは、成り行きを見守るしかないが、大宇買収につまづいたフィアットにとっては、中国市場をにらむ重要な足掛かりとなる可能性も考えられる。

 北の地に、南の資本が建てた工場で、イタリアの自動車が生産され、巨大なアジア市場に送り込まれる――ヒト・モノ・カネが国境を超えるグローバリゼーションの波が、雪解けを迎えつつある朝鮮半島に、早くも打ち寄せているようだ。 (金賢記者)

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