それぞれの四季

根づいた盛岡冷麺

金才順


 冷麺の美味しい季節になった。

 湿度が高く蒸し暑い日に食する1杯の冷麺には心身をリフレッシュさせる効果がある。

 冷麺には思い入れが…。

 寮生活をした学生のころ焼肉店を営む実家に帰ると、手打ち麺作りにいそしむオモニの姿があった。

 注文を受けてから粉をこね玉にし、手動の製麺機で押したものをゆで上げる。素早く冷水に採り洗ってスープを注ぎ、具を載せると出来上がり。この間30分位だったろうか、気の抜けない作業だ。

 美味しいものは手間がかかる。私はもっぱら食べてばかりだったがもっと楽に出来ないものだろうか、と厨房で汗だくになり働くオモニの小さい背中をみながら思ったものだ。

 ピョンヤンの玉流館で本場の冷麺を頂いた時は感激した。

 そば粉入りの細い麺、ボリュームたっぷりの1杯に料理人の心意気と、ピョンヤン市民の麺好きを実感した。

 この平壌冷麺を東北の地、岩手に広めるため心血を注いだ1世同胞の存在を知ったのは数年前のこと。

 店の雀荘の来客に手打ち麺を出し味を根づかせて行ったと言う。黒っぽい見た目を嫌う日本人向けにそば粉を抜きアレンジする事も考えた。

 ピョンヤン出身のその同胞は故郷と風土が生んだ冷麺を心から慈しみ、1人でも多くの人々に食べてもらおうと研究したようだ。

 今、南北の和解ムードの中で冷麺人気も高まっていると聞く。わが民族伝統の味を広めようと多くの同胞飲食業者が企業努力を重ねてい 
る。  (ジャーナリスト)

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