南北合併・合作事業の現状

ジャンル多彩、交易額は過去最高
北の電子技術に熱い注目


 金正日総書記と金大中大統領が署名した南北共同宣言では、双方が「経済協力を通じて、民族経済を均衡的に発展」させることがうたわれている。1998年から行われている金剛山観光事業をはじめ、南北間では多彩な合弁・合作事業が営まれているが、今回の共同宣言は、経済協力・交流をさらに促進させて、南北ともに発展する道を切り開くものだとして、双方の期待は高まっている。事業の現状と、進行中の主な事業を紹介する。(柳成根記者)

 進行中の代表的な合弁・合作事業としては、コンピュータソフトウェアの共同開発、家電製品の委託加工、共通ブランドのタバコの生産などが挙げられる。

ワープロソフトを共同開発

 ソフトの共同開発は、この分野では南北初の試みとあって、高い関心を集める注目のプロジェクトだ。

 三星電子と朝鮮コンピュータセンター(CC)の間で契約が結ばれたのが昨年12月。今年3月には、中国・北京に合弁会社「朝鮮コンピュータ・三星ソフトウェア共同協力開発センター」がオープンした。当面は、朝鮮CC側から10人程度のスタッフを派遣する。

 最大の注目はワープロソフトだ。同じ言語を使いながらも、文字コードやキーボードの配列など規格が異なり、南北で互換性のない異なるソフトが使われてきたことから、統一コードを採用した単一ソフトの登場が待たれていた。

 このほか、パソコンの基本ソフト「リナックス」の応用ソフト、ゲームソフト、中国語認識ソフト、文書要約ソフトが開発される。

カラーテレビ委託加工

 カラーテレビの組立・加工を北に委託し、完成品を南で販売する事業は、三星電子とLG電子がラインを軌道に乗せている。

 三星は前述の契約の際、テレビ、ラジカセ、電話機の委託加工契約も締結。大同江テレビ製の20インチモデル、2万台が先月から南で市販された。価格は南製とほぼ同額の20万ウォン(約1万9000円=6月27日現在、以下同)台。三星は、年間生産目標をテレビ2万台、ラジカセ12万台、電話機24万台に定めており、ラジカセと電話機も近く市販する見込みだ。

 LGは96年から、この事業を手掛ける。委託先は三星と同じ大同江テレビで、年間生産目標は1万5000台。4月に1800台、5月には2000台の20インチテレビが南側に搬入された。

共通ブランドのタバコ販売

 北の光明星総会社と南のタバコ人参公社が開発・生産した初の共通ブランドのタバコ「ハンマウム」(1つの心)は、4月1日に南北同時に市販された。「朝鮮産の黄色種の葉タバコを用いた最高級の製品」(タバコ人参公社)だ。

 生産は3月初旬、平壌の龍城タバコ工場でスタート。年間生産目標は1億箱で、そのうち南で8割、北で2割が市販される。

電子工業団地造成を計画

 三星グループは現在、北側に大規模な電子工業団地を造る計画を進めている。三星の担当責任者が明らかにしたもので、南浦と海州の近隣に50万平方メートル規模の工業団地を造る方向で北側と協議中だという。

 三星は、今後10年間で5〜10億ドル程度の投資を見込んでいる。工業団地には三星の電子関連企業が入り、テレビや冷蔵庫など家電を中心に生産する計画だ。

 また、現代グループも、海州に電子工業団地、江原道の通川に軽工業団地を造る計画を検討している。

漁業協力、金剛山観光・・・

 このほか、現在進行中の経済協力・交流事業は多岐に及ぶ。

 北の民族経済協力連合会と南の全国漁民総連合会は、今年2月に北京で協議し、民間級漁業協力を行うことで合意した。朝鮮東海の経済水域で、イカやカニの宝庫として知られる「恩徳漁場」を、北が南に提供するもので、初の漁業分野での南北協力事業となる。

 大宇グループはカバンや衣類、第一毛織も衣類を北で委託加工し、南で販売。パソコンモニターの北での生産を始めたIMRIをはじめ、ベンチャー企業の関心も強い。

 98年11月から始まった金剛山観光事業も順調。観光客数は今年3月末現在で20万人を突破した。

昨年度3億3344万ドル規模
前年比1.5倍、10年で20倍/インフラ整備など今後に課題も

 南北間交易の推移と、合弁・合作事業の傾向について、統一部交流協力局のデータなどをもとに見た。

 昨年度の南北間の物資交易規模は、過去最高の3億3344万ドル(約356億円)。最大規模だった97年度を8%上回り、前年度の1.5倍の数値を弾き出した。交易初期の89年度が1800万ドル(約19億円)だから、10年で20倍に膨れ上がったことになる。

 三星やLGが行っている委託加工事業は、91年から本格的に始まったが、昨年度の交易額は、交易総額の約3分の1、過去最高の9962万ドル(約106億円)に達した。

 交易規模の拡大に伴い、相互訪問も急増している。

 昨年度までの10年間で、南から北への訪問者数は約22万人を数える。約20万7000人は金剛山観光客だ。残る約1万3000人の内訳は、金剛山以外への観光客(約6400人)、軽水炉事業(約2900人)、対北支援(約11100人)、合弁・合作事業(約900人)などとなっている。

 一方、北から南への訪問者数は637人。南北高位級会談や統一サッカーなど、平壌・ソウル交互開催の行事が集中した90〜92年が569人と9割以上に達する。内訳も、高位級会談の参加者・随行員が360人、スポーツ関係が210人を占める。合弁・合作事業での訪問者は19人にとどまっているが、これは北側で協議を行うケースがほとんどであるためと見られる。

 北から南に搬入される主な品目は農林水産物、繊維類、鉄鋼・金属製品など。南から北への搬入品目は化学工業製品、繊維類、運搬機械などとなっている。中心は、搬入品目の84%弱を占める繊維類だが、近年、家電製品やコンピュータ関連が増加傾向にある。

 大きな特徴が、このコンピュータ分野での活発な交易である。南では、北のコンピュータ関連技術に対する信頼度はきわめて高い。「北のソフト開発技術は相当な水準。南のハード開発技術と組み合わされば効果は大きい」(京郷新聞)、「不良品の発生率は1%未満で韓国内と同じ」(IMRIの兪※(※=王偏に完)寧会長)など、絶賛の声は多い。三星やLGがテレビの組立・加工を北側に委託したように、こうした信頼が対北投資熱の高まりにつながったと、南では見ているようだ。

 インフラ整備の問題など、交易のさらなる拡大に向けては、いくつかの課題も指摘されている。だが、南北が協力して民族経済を発展させようという機運は高まっており、合弁・合作事業への関心は強まっている。

TOP記事

 

会談の関連記事