金大中大統領と共に、特別随行員として訪北した詩人の高銀さん(66、民族文学作家会議常任顧問)は14日の朝、「大同江のほとりで」という詩を創作し、同日に行われた晩さん会で、金正日総書記と大統領の前で朗読した。詩の全文を紹介する。
何のために ここまでやって来たか…
眠れぬ夜を明かし
この朝にのぞむ大同江の川面は
昨日であり
今日であり
また明日でもある 同じ青いさざ波
時はまさにこのようにやって来ている
変化の時は 誰しも止めえぬ道となり
今 やって来ている
変化こそ 真理
何のために ここ川辺までやって来たか…
すすり泣くがごと うち震える体
ひとり たたずみ
むこう岸の東平壌・紋繍里の野辺をのぞむ
しかり
分かたれた2つの民族が 骨の髄まで1つの生ともなれば
私はことさら民族を歌わない
ことさら民族を語らない
それをすっかり忘れてしまい 高らかに天空を駆けまわろう
その時までは
その時までは
みすぼらしい乞食となろうと 何になろうと かまわない
ともかく私は民族の旗じるし
その時までは したたかに生きぬく民族の確かたる種となろう
この朝 平壌・大同江のほとりにたたずむ
いにしえの詩人は川水を別れの涙に歌ったが
今日 私は川むこうをのぞみながら
背にして来た漢江の日々を静かに想う
西海の沖あいで
まったく異なった1つの海水となる
2つの川水の力強い出会いを想う
陽がのぼる
引き裂かれた両断の地の暗夜を払いのけ
新しい朝が闇を切りさき 白みかかる夜明けの痛みののち
やがて あの空いっぱいに紅さす
豪奢な扇子模様の陽の光が燦然とひろがってゆく
何のために ここまでやって来たか
過ぎし歳月 われわれは互いに異なった世を生きてきた
異なった理念と 異なった信念
互いに異なった歌を歌い 分かたれて 戦いもした その時 憎悪のさ中 500万人が死なねばならなかった
その時 山河のありとあらゆるところ 焦土と化し そこかしこの都市も皆廃虚と化し
ひと晩じゅう こおろぎの鳴き声だけが天地に満ちた
戦いの前線は まさに血みどろの休戦線
銃口を向け合った鉄柵(てっさく)は 互いに敵と敵との高塀となり
川となり
その囲いの中の日々が習わしとなっていった
そして2つが2つであることも知らなかった
半分であることも知らなかった
2つは3つに4つに それ以上に
分かたれることも知らずにいなければならなかった この障壁の歳月 酒は何と苦かったことか
だが このままセメントに固まるわけにはいかない このまま止まって
時代の尻尾にくっついているわけにはいかない
われわれは長いあいだ1つだった
千年祖国 1つの言葉を使い
愛を語り 悲しみを述べた
1つの心臓であったし
愚かささえも1つの知恵であった
過ぐる歳月 分断半世紀は暗い谷あい
その谷あいを埋め
1つの祖国が 足音立てて歩いて来ている
何のために ここまでやって来たか…
この朝 大同江の川面には
昨日が流れ行き
今日が流れ行き
明日が流れ行く
その間 互いに異なったものは自明のはず
まず同じものを探る出会いが必要
巨大な歴史の庭の真ん中で
卑小な異なったものに目くじら立てぬ出会いが必要 何と朽ち果てた命の窪地だったことか
いわれもなく離れ離れとなった
何と悲しい冤魂(えんこん)の痕だったことか
何のために ここまでやって来たか…
われわれが成しとげるべき
1つの民族とは
過ぎし日の郷愁に帰ろうというのではない
過ぎし日のあらゆる過ち あらゆる野蛮 あらゆる恥辱を 皆埋めつくして
まったく新しい民族の世を仰ぎ見つつ うち建てることだ
そして統一は再統一でなく
新しい統一であること
統一は以前でなく
以後のまばゆい創造でなければならない
何のために ここまでやって来たか
何のために ここまでやって来て いざ帰らんとするのか…
民族には ひっきょう明日がある
この朝 大同江のほとりに立って
私と私の子孫代々の明日をのぞむ
ああ、この出会いこそ
この出会いのためにこそ ここまでやって来た
われわれは 現代史百年の中の最高の面々ではないか
いざ帰りなむ ひと房の花を胸に帰りなむ
(朝鮮大学校講師・金学烈訳)
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