どんな国? どんな関係?
朝鮮外交、新パートナーの横顔を見る

 


 1月、突然とも言えるイタリアとの国交樹立を皮切りに、多角外交を積極的に展開してきた朝鮮政府。南北首脳会談を成功に導く環境醸成に役立ったのは明らかだが、今後は朝鮮半島を巡り、どんな協調の枠組みが出来て行くのか。朝鮮の新たなパートナーとなった国々の、経済面の横顔などを見る。 (金賢記者)

朝鮮をめぐる最近の外交の動き

2000

    1・4 朝鮮とイタリアが国交樹立
    2・2

        9

朝鮮外務省局長一行、カナダを訪問(〜7)
朝鮮とロシア、友好善隣協力条約を締結
    4・4

        6

       17

朝・日国交正常化のための第9回本会談(〜7)
フィリピン外務省高官、朝鮮と近く国交を結ぶ方針と言明
朝鮮政府、7月に外相を派遣する意思をタイ政府に伝える
    5・8

       10

       16

       29

朝鮮とオーストラリア、25年ぶりに国交回復
朝鮮のARF正式参加が決定
朝鮮と英国の外交実務者、平壌で会談(〜20)
金正日総書記、中国を非公式訪問(〜31)
    6・8

        9

       19

在ジャカルタ朝鮮大使館、ニュージーランドに国交樹立を申し入れ
ロシア政府、プーチン大統領の7月訪朝を発表
米国が対朝鮮経済制裁の一部緩和を発表

イタリア/グローバル化で産業再編

 イタリアは今年1月、朝鮮と国交を樹立。主要7ヵ国(G7)では初めて、欧州連合(EU)加盟国としては、スウェーデン、フィンランド、ポルトガル、デンマーク、オーストリアに続く6番目の例となった。

 政治面では今年4月、財政難や失業対策の遅れで人気を落とした与党・中道左派連合が、統一地方選挙で敗北。ダレーマ首相が辞任し、アマート新内閣が発足した。来年春に予定されている総選挙では、中道右派連合が優勢とされており、先行きは見極めにくい。

 1973年の石油危機以来、「欧州の病人」とまで言われてきた経済は、超緊縮財政などのかいあって、先進国の地位を保って来た。

 しかし、輸入石油への過度の依存、産業のエレクトロニクス化の遅れ、技能労働者の不足、公共部門の非能率など構造的問題がことあるごとに表面化し、経済成長は思うにまかせない。95年に3%と好調だったGDP成長率は、99年には1.4%程度とされている。

 貿易はGDPの4割を占め、鉄鋼、機械、自動車、衣料、革製品は高い競争力を保っている。ただ、産業界はグローバル化による再編の波に洗われている。イタリア最大の民間企業、自動車のフィアット・グループは近年、収益を大幅に落としているが、南朝鮮の大宇自動車の買収に名乗りを上げるなど、巻き返しに必死だ。

オーストラリア/内需好調も輸出拡大が課題

 オーストラリアは5月8日、25年ぶりに朝鮮との国交を回復した。

 立憲君主制をとっており、英連邦総督が元首(英女王)の名代として形式上の統治を行い、実際には下院第1党党首が首相となり、内閣を率いる。昨年11月、自国民から大統領を選ぶ共和制に移行するかどうかで国民投票が行われたが、反対が約55%で否決された。

 現ハワード政権は、アジア太平洋を重視した外交を展開。友好協力の増進に努めている。ただ、昨年のインドネシア・東ティモール独立の動きを巡っては、ハワード首相が、アジア地域で米国に代わる「警察官」役を担うと表明。内外から反発を受ける一幕もあった。

 経済は、失業率が8%前後とやや高いものの、おおむね好調を維持。98年の成長率は4%を達成、99年も3%程度とされる。

 ただ、最近はシドニー五輪に向けた建設ブームなど、内需に支えられてきた面が大きく、97ー98年度の貿易収支は29億5100豪ドルの赤字。人口が2000万足らずと国内市場が小さいだけに、輸出拡大が成長維持の至上命題だ。

 産業は輸出の6割を占める農業、鉱業など一次産業が主力だが、先端技術分野も伸びている。

 なお、同国と関係の深いニュージーランドも、朝鮮との国交樹立の動きを見せている。

フィリピン/電子分野で躍進、海外に視線

 フィリピンは、7月に朝鮮の白南淳外相の訪問を受け、正式に国交を樹立する予定。これで、ASEAN10ヵ国のうち、朝鮮と外交関係がないのはミャンマーだけになる。

 1昨年の5月、「貧者の味方」を掲げて当選し、一時は8割近い支持を得ていた元俳優のエストラダ大統領だが、最近は各種スキャンダルや貧困対策の遅れなどで人気を落とし、昨年暮れには5割を割った。

 そんななか、光が見えているのが経済だ。各種の指標から、成長軌道入りがうかがえる。97年の東南アジア通貨危機の影響から、98年のGDP成長率はマイナス0.5%と大きく落ち込んだが、昨年は2.9%と回復し、今年も3.8%はいくと見られている。

 特筆すべきは、今年1ー4月の輸出が前年同期比10.6%増と好調なことだろう。

 フィリピンの主要輸出品と言えば砂糖、木材などを思い浮かべがちだが、それは70年代初めまでで、80年代は衣服・衣料、90年代は電子製品と変遷してきた。現在、総輸出額に占める電子製品のシェアは5割を超えている。

 先端産業が急成長した背景には、インテル、東芝など多国籍企業の進出がある。生産されている製品には、最新のペンティアム・チップなども含まれており、米日が主な輸出相手だ。

 エストラダ政権は、これら製品の輸出を2004年までに現在の3倍近い450億ドルにする目標を立てており、市場開拓にも積極的になるだろう。

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