それぞれの四季

朝鮮人は信用できる 金才順


 昨春、江戸川区長の中里喜一氏が高齢のため勇退した。在任中は区内の朝鮮人の生活に関心を払い、とりわけ朝鮮学校の運営費補助を長期にわたり行った。

 90歳の中里さんは日頃、「朝鮮人は紳士的で、ハートが温かく、口が堅いので信用がおける」と語り、地域の同胞らに全幅の信頼を寄せていた。お互い腹を割っての付き合いだった。

 36年間、区政に携わった老練な自治体の首長にここまで言わしめたのは、同胞や活動家らの人間的魅力を物語るものだと思う。

 そして、筆者の知る限りでは、地域で熱心に行政との交流を深めてきた商工人、姜永吉さんの役割が大きかったように思う。日本人とのつきあいについても「こちらの要求ばかりではいけない。相手を尊重し日常のつきあいの中で少しずつ信用を培わなければ…」というのが、持論だ。

 機会あるごとに自宅に親しい人たちを招き、家族総出で心のこもるもてなしをした。

 姜さんは専従の活動家ではない。知恵を絞り、心をこめて、地元同胞のために奮闘している貴重な存在だ。「同胞として力を尽くすのは当たり前」と謙虚に語る。

 前区長の仕事を引き継いだ新区長も朝鮮学校への補助金を引き上げた。同区の全国的にも高いレベルの支給額は、目には見えない地域同胞と活動家らの並々ならぬ活動のたまものであろう。

 地域のみんなが長年にわたり、汗を流し、心を1つにした結果が、そこには歴然とある。

 何かを成し遂げる時には、やはり地道な努力と誠実さが欠かせない。(ジャーナリスト)

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