取材ノート

「知識」に組織の運命


 書店のビジネスコーナーに行くと、「ナレッジマネジメント」を取り上げた本が目立つ。

 ナレッジマネジメントとは、直訳すると知識経営になる。企業などが、会社の内外にある様々な知識を経営資源として活用し、生産性を高めたり、戦略を革新する経営手法のことだ。ここで言う知識には、活字や数字で整理されたデータの類から、個々のスタッフが日頃の業務で培った知恵や腕前、または意見や気付きといった抽象的なものまで含まれる。

 激しい競争を勝ち抜くには、環境の変化にいち早く対応せねばならない。そのために会社の全神経を研ぎ澄まそうというわけだ。ちなみに、米マイクロソフト社は情報技術を駆使して、世界中の事業所を網羅するナレッジマネジメントの仕組みを構築しているが、呼称は「デジタル・ナーバス(神経)・システム」という。

 これには今のところ、大きな企業ほど熱心に取り組んでいるように見える。図体が大きいほど小回りがきかない、とも思えるが、ナレッジマネジメントを取り入れて自己革新に成功している企業も少なくない。

 規模が小さくても、知識の共有は自然にできるものではない。10人前後の会社に勤める男性は、「入社してしばらく、仕事の全体像がつかめず、森の中でさ迷っているような気がしていた頃がある。ナレッジマネジメントの本を読んで、ああ、うちにはこれがないんだと気付いた」と言う。

 上意下達や縦割りなど、経営組織に染み付いた古い慣行は、想像以上にスタッフの発想を縛り、やる気を失わせる。リーダーがこれに危機感を持ち、改革を決断できるかどうか――。組織の生き残りを分ける、1つの指標と言えるかも知れない。(金賢記者) 

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