ソクタム―ことわざ辞典
「平坦な地面に水がよどむ」
一見、女性にもてそうもない男性が、とびっきりの美女を連れて歩いていたり、パッとしない人が、ものすごい知恵を発揮することがある。これと同様に、羽振りのよいものほど金が無く、勤勉でこつこつと金を大事に使っている者こそ、実は金を持っているということがある。
「平坦な地面に水がよどむ(タンダナン タンエ ムリ コインダ)」 どうして、くぼみもない平坦な地面に、水がよどむのか。これは、「人は見かけによらぬもの」というように、ありそうにないことがよくありえることを言い表している。
すると、息子は頭にきて「畑を耕したいから近所の家から鍬(くわ)を借りてくれよ」と、オモニに頼んだ。そして、借りた鍬を持って息子は1日中かかって土を深く掘り、その中に糞をいっぱいうずめ、その上に胡麻(ごま)の種子を一石まいた。 すると、それからまもなくして、胡麻の苗(なえ)がいっせいに生えだした。そこで、息子は何を思ってか、それをただの1本だけ残して、残りはみなひきぬいてしまった。1本の胡麻はだんだん大きくなり、やがて大木となって、実がどっさりなった。 それから山へいって蔓(つる)をどっさり刈ってきて、それで丈夫な長い綱をよった。綱の端に犬を結び、山へ連れて行って綱の片端を木に結んでおいた。 しばらくすると、山奥にいた虎たちは、胡麻油のかんばしい香気をかいで、方々から犬のまわりに集まってきて、これは美味しいご馳走だと、ひと口パクリと食らいついた。すると、犬はあまりにすべすべするものだから、そのまま虎の腹の中を、するすると通って尻の穴からするりと抜けでた。後ろにいた虎はこれを見て、またよいご馳走だと、食らいつき、また犬は尻穴から抜けだす。またその後ろにいる虎が食いつく……。 このようにして怠け者の息子は、何10何100という虎を綱にいちどにつなぎ通して、やすやすと捕らえたのである。 |