6月、法定上限金利引き上げ

消費者金融に再編の波/中小企業者の経営直撃


貸し倒れ増加、外資参入
顧客争奪も激化必至
  

 消費者金融業界が、大きな節目を迎えようとしている。一連の商工ローン問題に端を発する貸出金利規制の引き締めによって、業界が淘汰・再編の波に洗われるのは必至とされているからだ。中でも、経営基盤の弱い中小業者には深刻な影響があると予想されており、成り行きは予断を許さない。

11ポイント

 6月1日、貸金業の貸出金利を引き下げる改正出資法が施行される。

 現行の出資法で定められている上限金利は、40.004%。それが6月からは29.2%と、一気に11ポイント近くも引き下げられる。

 武富士、アコム、プロミス、アイフルなど業界大手は、現状でも上限金利を25.55%から29.2%に設定しており、改正後の規制をクリアしている。返済が遅れた場合の遅延損害金の利息は、上限金利より高くなっているものの、それを調節したとしても、全体の利益にとっては至って軽微な影響しかないと言われる。

 一方、中小は大半が上限金利を30%台に定めており、中には法規制ぎりぎりの40%としている業者も珍しくないらしい。改正法に合わせて金利を引き下げることの影響は、大手に比べるとかなり厳しいものがあると察せられる。

コスト格差

 金利引き下げは当然、企業の利益縮小につながっていくわけだが、かねてから進行していた業界の「優勝劣敗」がいっそう加速しかねないという面でも、重大な意味がある。
 大手と中小の上限金利に大きな差があるのは、規模の違いもさることながら、資金調達という営業の根幹をなす部分で、置かれた状況が決定的に違うという背景がある。

 規模の大きさに加え、資本市場でも高い評価を受けている大手には、2〜3%という低いコスト(金利)で、潤沢な資金が供給されている。それが中堅や中小の場合は、3倍の6〜10%になる。

 さらに、大手は貸し倒れ率が3%弱、中堅で5%弱、中小では6〜10%になっている。これに諸経費を加えた経費率では、大手で10%、中小で30%と3倍の開きがあるとされる。「儲け過ぎ」批判がついてまわる消費者金融業だが、内幕は大手と中小とで相当な違いがあるということだ。

相次ぐ買収

 業界の今後についても、楽観を許さない要素が目立つ。消費者金融の利用者は、1000万人に達したと言われる。巨大なマーケットの背景にあるのは、大手の上場・公開などによる社会的認知度のアップや、一時借りに抵抗を持たない消費者感覚の変化だ。さらに長期にわたる低金利が、資金調達コストを相対的に低くしてもいる。

 しかし、主な利用者層である20代人口が減少に向かっていること、無人店舗や自動契約機の大量投入で潜在的な顧客の掘り起こしが一段落したことから、3、4年後には業界の成長は鈍化するとの指摘がある。

 そして最も危ぐされているのが、年間12万件を超えた個人破産者の、いっそうの増加だ。

 現在、自己破産予備軍の多重債務者は100万から200万に上ると見られている。影響はすでに表れており、中小ばかりでなく大手や中堅も、貸し倒れ率が徐々に上昇しているのだ。

 今年に入って、大手による中堅業者の買収が相次いでいるが、これも貸し倒れ率上昇リスクを回避するための一手とされる。

 消費者金融利用者は通常、最初は知名度の高い大手に行き、債務が膨らむと条件のゆるい中堅や中小で借りる。大手への返済に、中小で借りた分をあてるケースは少なくないそうだ。つまりは中堅・中小が新たな規制のもと、貸し出しを引き締めたり回収を強化すると、大手の貸し倒れにもつながりかねない。そこで、資金に余裕があるうちに中堅を救済買収しておこうというわけだ。

 加えて、進出して来る異業種や外資系との優良顧客の奪い合いに備え、顧客層の幅を広げたいとの戦略も見て取れる。

 いずれにせよ、業界がいっそう大手中心に傾くのは確実で、中小には正念場になりそうだ。 (金賢記者) 

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