ヒットの真相

プリペイド携帯電話
契約不要の手軽さ人気/犯罪悪用急増で規制論議も


 プリペイド式の携帯電話が売れ行き好調だ。1998年10月の発売開始以来、出荷台数が順調に伸び、今年3月末現在で約38万台を売り上げるヒット商品となった。先陣を切った日本移動通信(IDO)とツーカーセルラーグループを筆頭に、現在は28社が手掛けている。

 プリペイド携帯が誕生した背景には、3人に1人が所有と日常生活に定着した携帯電話の顧客層を広げたい業者側の思惑がある。

 従来の携帯の場合、通話料を口座振替などの形で後払いするため、身元証明を伴う契約が必要だ。銀行口座やクレジットカードを持たない学生や子供が持つには、保護者の承諾がいる。親が塾通いの子供に連絡用に持たせるような用途を想定すると、この煩わしさを解消する必要がある。

 そこで編み出されたのが、通話料をプリペイドカードで前払いすることで、口座振替の手続きを省く方法だ。端末機とカードを買い、暗証番号を入力すると通話できる。残高がなくなったり有効期限が切れたら、テレホンカード感覚でカードを買い足すようにし、コンビニエンスストアに置くなど手軽さにこだわった。

 その結果、子供を持つ親に「使い過ぎる心配がない」と好評。プレゼント用や2台目として買うパターンも生まれ、売り上げは一気に伸びた。

 だが、この利便性を悪用した犯罪が急増、社会問題にもなっている。4月の幼児誘拐事件でクローズアップされた印象があるが、以前から麻薬売買や性犯罪などの小道具に使われており、犯罪件数は発売開始から1年半で106件を数える(警察庁調べ)。顧客名簿用に住所と氏名を書き込むことから、業者側は契約という名称を使っているが、偽名を使えば身元が判明しないので、厳密には契約とは言えない。実際に買ってみたが、こんなにあっさりと手に入るものかと驚いたほどだ。

 プリペイド携帯の是非をめぐっては賛否両論だ。犯罪防止に、プリペイド携帯についても個人情報が必要とする警察庁に対し、郵政省はプライバシー保護の観点から行政指導には消極的。メーカー側も「手軽さは生命線」と譲らない。

 身元証明が義務づけられた場合でも、コンビニできちんと対応できるかなど、問題点も多い。

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