それぞれの四季

「小さなバイリンガル」 金佳姫


 「オンマ、オンマ」―娘にこう呼ばれるたび、なんだかホンワカした気分になる。2歳になる娘は目下、言語習得中。まるでスポンジのような吸収力で新しい言葉をどんどん覚える。はじめて口にした言葉は「アッパ」。その後、「ハンメ、ハルベ」と続き、遅れること半年でやっと「オンマ」と言ってくれた。

 一緒に過ごす時間が1番長いのに「オンマ」が最後になってしまった理由を考えてみると、保育園が思い当たる。お迎えに行くと、保育士が「ママ来たよ」と、娘に伝える。保育園ではママで、家ではオンマ。幼い脳みそは少し混乱していたようだ。そのうち、「オンマ=ママ」という図式が彼女なりに理解できたらしい。時々間違えて家でも「ママ」と呼ぶので、「ママじゃなくて、オンマって呼んでね」と念を押すと、少しバツの悪そうな照れ笑いをする。どちらかに統一すべきだと、親切に助言されたこともある。

 でも思うに、ウリマルと日本語を一緒につめこんで何か不都合があるだろうか。何てったって私を含め、多くの在日の子供たちがそうやって育てられて来た。何の抵抗もなく物にはウリマルと日本語、2つの名前があるということを自然に身につけてきた。私の実家は特別な財産もないつましい家庭だったが、ウリマルと日本語という素晴らしい言葉のプレゼントを私に与えてくれた。このかけがえのない素敵な環境を私は娘にそのまま譲り渡したい。

 「バイバイ」と「アンニョン」、「ありがとう」と「コマッスンニダ」――娘は小さなバイリンガルに育っている。 (事務員)

TOP記事 女性・家庭 社  会 経済・経営