BOOK−新刊から


☆「済州島4.3事件 第5巻 焦土化作戦(中)」(「済民日報」4.3取材班、姜聖律訳)

 10年間にわたって事件の真実を追い続けてきた現地「済民日報」記者たちの努力の結晶である本書は、48年の晩秋から済州島に吹き荒れる流血の風、いわゆる焦土化作戦の実像とその虚構性を、村別の取材を通して1つ1つ解明している。証言の生々しさに圧倒されつつ、改めてこの事件のせい惨さと現代史に残した傷の深さを思い知ることができる。記者たちは、今も現地調査を続けている。 (4000円+税、新幹社)

 

☆「環(歴史・環境・文明)」学芸総合誌(季刊)

 第1号の特集は「歴史認識」。いま世界では、日本では、歴史、とくに近現代史の見方をめぐって、なお対立が続く。不毛な論争に終止符を打つべく、過去と現在の対話である歴史を、「全体」としてどう把握し、記憶し、書くのかをイマニュエル・ウォーラースティンをはじめとした知識人が真しに論じている。そこで彼らは、歴史学の資料を書かれた資料以外にまで広げようとする「新しい歴史学」の提示をしている。 (2000円+税、藤原書店)

 

☆「『自由主義史観』批判―自国史認識について考える―」(永原慶二)


 教育の分野などで自国中心・自国賛美史観をおしつけようとする言説を、とくに西尾幹二の「国民の歴史」を手掛かりとして、真っ向から歴史的に批判している。著者は、この本を 独善的自賛の日本歴史物語 としたうえで、「冷静な史料批判から真実の追及を始めるのが定石であるが、西尾氏は自分の主張に都合よいものだけを無批判にならべて事実のように語っている」と、厳しく批判している。 (440円+税、岩波ブックレット)

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