ソクタム―ことわざ辞典

金さえあれば鬼神もあやつれる


 「金さえあれば鬼神もあやつれる」 「地獄の沙汰も金しだい」、金さえあれば鬼神も走り使いさせることができるという意味だ。華僑のことわざにも、「金があれば、鬼に臼をひかせることもできる」というのがある。

 しかし、物欲心にかられ、金の力で人を支配しようとすれば、必ず災いが及ぶものである。

 昔、あるところに大金持ちの人がいた。彼は、いくら親しい友人の宅を訪れるときでも、お祝いものを持たず、ただ酒盃を懐に入れて行くだけの大けちで、評判が悪かった。

 ところがある日、どうしてもお祝い物を持っていかねばならない、ごく親しいところがあったので、いろいろと思案をめぐらしていた。

 それで彼は、この機会に10人の下僕をつれてその家に行くことを決心した。それには深い魂胆があった。普段こき使われてブツブツ文句をいい立てている下僕どもに、他人のご馳走をタラ腹食わせて不満をなだめ、さらに帰りには下僕どもに食卓の銀の匙(さじ)と箸(はし)を1組ずつくすねてこさせようという、実にあくどい計算をしていたのであった。

 「これなら多少のお祝い物をもって行っても儲けがある。一挙両得じゃ!」。その計画は見事に的中した。けちな金持ちはそれを見ると笑いが止まらなかった。ところが、1人の下僕だけは匙のかわりに箸を出した。 「なんじゃこれは! わしを見い!」といって、主人は銀の食器を出すのであった。もじもじしていたその下僕は、小さな声でつぶやいた。

 「旦那様のようにたいへん立派な物を持ってこようと思えば、私の心臓を泥棒の心臓にとりかえねばなりません。旦那様の心臓をちょっと貸して下さい。そうしたら家でも金でもなんでも持ってきます」

 その話にけちな金持ちは胆をつぶし、心臓をおさえて逃げだしたという。

 3月、カジノのスロットマシンで、3495万ドル(約36億7000万円)という史上最大の大当たりをした後、運転中に事故にあい、助手席にいた姉は即死、自身も大けがをして入院した米国の女性の話が伝えられた。「労働意欲」を忘れ、奢侈(しゃし)な生活を送れば、どういった災いが及ぶか、考えさせられる。

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