来年4月施行の「消費者契約法」
悪質な契約は取消OK
自宅に押しかけられたり、だまされて無理に結ばされた、不当な商品購入やサービス提供の契約は取り消せます――。悪徳商法による被害から消費者を守る「消費者契約法」が、来年4月から施行される。本格的な消費者保護への第1歩と期待される半面、悪徳業者に対する取締効果の弱さなど、制度上の不備も少なくない。消費者契約法の内容を見た。
消費者保護への一歩 その内容は、一定期間内を条件に、(1)契約そのものを取り消しにできる(2)消費者に一方的に不利な契約条項を無効にできる――という二つのケースに大きく分類される。 (1)のケースによく似た制度に、1973年に導入された「クーリング・オフ」がある。訪問販売などで勧誘に乗せられ、つい不要な物を買ってしまった場合、一定期間内に通知すれば違約金ゼロで契約を取り消せるというものだ。 両者の大きな違いは、この一定期間の長さだ。クーリング・オフでは、原則として「この制度の存在を業者から知らされた日から8日以内」だが、消費者契約法では「契約して五年以内で、だまされたと気付いた時から6ヵ月以内」と、消費者の側にさらに有利なものとなっている。 それでは、具体的にどのような場合に、契約の無効化が可能なのだろうか。 まず、(1)の「契約取り消しのケース」では、▽商品価格など重要な事柄についてウソをつかれた▽価格変動の可能性があるのに将来の見込みを断定する説明をされた▽消費者に不利益な情報をわざと告げられなかった――など、言葉巧みに勧誘された場合は、たとえ本人の意思に基づいた契約であっても、取り消しの対象になる。 また、▽自宅に居座られて帰らないので仕方なく契約した▽「帰りたい」と言ったのに事務所に閉じ込められて契約させられた――などの押し売りも、もちろん対象。いずれも契約成立後の取り消しが可能だ。 (2)の「消費者に一方的に不利な契約条項」とは、▽「いかなる場合も当方は一切、責任を負いません」▽「いかなる場合も交換、返金はしません」||など、業者側の損害賠償責任を免除する表現を指す。また、一般的な金額の範囲を超える法外なキャンセル料や遅延損害金を請求する条項も、同様に無効にできる。 (1)、(2)とも、業者側の落ち度が認定されれば損害賠償の請求が可能だ。 このように、消費者に不利益を生じさせないことを徹底させた消費者契約法だが、一方で問題点もいくつか指摘されている。 例えば、故意ではなくうっかり、業者が契約のポイントを言い忘れた場合、取り消しの対象から除外される可能性がある。悪徳業者に対する罰則規定も設けられておらず、取締効果を懸念する声も上がっている。さらに、クーリング・オフよりは長いとはいえ「6ヵ月という取消期間は短い」(「消費者契約法」の早期制定のための全国ネットワーク)との指摘もある。 契約トラブルを未然に防ぐには、内容がはっきり分からない契約はしないなど、消費者にも最低限の自衛措置は不可欠と言える。そのうえで、契約について少しでも疑問が生じたり、実際にトラブルに巻き込まれ、契約を解除したい場合は、速やかに専門家に相談して、適切に対処することが必要だ。 (柳成根記者) |