心に残る本/崔誠姫(22)

ニュースの歴史的背景や意味を
とらえるジャーナリストに


 卒業後、記者として働くため今、各新聞社を回るなどの就職活動に励んでいる最中だ。自分の足でいろんな人に出会い、取材をし、それらを通して日々起こる出来事の歴史的背景や意味をとらえながら、常に自己を変革していきたいと思っている。また、じっとしていられない性分なので、この職業が最も自分に相応しいものと認識している。

 卒業後の進路を選択するにおいて影響を受けた本が4冊ある。

(1) 若きウェルテルの悩み (ゲーテ/高橋義孝訳・新潮文庫)

(2) 南京への道 (本多勝一著・朝日文庫)

(3) 空と風と星と詩 (尹東柱全詩集・影書房)

(4) 台湾―人間・歴史・心性 (戴國W著・岩波新書)

 

 

 (1)は、2年前に読んだもの。ウェルテルがロッテを知って愛し、自殺するという、一見単純な書簡形式の恋愛小説にほかならない。が、内容の重要な課題は、純真な気持ちで人間と接する普遍的な愛の究明ではないだろうか。

 (2)は、潜入ルポの古典として、私にジャーナリストになることを決心させてくれた1冊だ。虐殺の実態と被害者の怒りがリアルに伝わってきて、衝撃的であったし、歴史の記憶において証言がどんなに重要かを認識させてくれた。

 最近、これについての学術的な書物が出ているが、あまり怒りが伝わってこないし、「自由主義史観」を唱える識者は虐殺の人数はいうほど多くなかったと、継続して問題視している。数をうんぬんし、実際に虐殺があったことを認めようとしない言説にどう向き合っていくか、ジャーナリストになろうとする私にとって一つの課題であろう。

 (3)は、「死ぬ日まで空を仰ぎ、一点の恥なきことを…」という詩を残してこの世を去った作者の詩集。

 朝鮮を植民地化した日本の社会で翻ろうされていく一留学生の心温まる詩集の中にこんなくだりがある。「わたしの道はつねに新しい道、今日も……明日も」。常に前向きに生きていかねばと、実感した。

 (4)を読んで、植民地問題について朝鮮と台湾の認識があまりにも異なっていることに驚きを禁じ得なかった。本の中で台湾に対する日本の植民地を肯定する主張がしばしば出てくる。日本の政治家や反動学者の、例の「鉄道も敷いてくれた」という常とう語と同様な表現が。しかし、朝鮮はこれは、侵略の本質を隠すための手段でしかなかったと一貫して主張している。こういった歴史認識を踏まえて、卒論(テーマは「朝鮮総督府の言論弾圧 )を書くつもりだ。 (東京女子大学・文理学部史学科4年)

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