介護保険出足の様子は・・・

要介護認定の報酬請求
システム不備に現場あたふた


 4月1日からの介護保険制度開始から1ヵ月以上が経過したが、サービスの利用は当初の予想よりも低調で、予算面での混乱は表れていない。反面、開始前から指摘されていた需給のミスマッチや、なおも揺れ続ける制度の在り方をめぐり、少なくない問題が出ているようだ。現状を見る。

需要と供給のミスマッチも

実態と差

 真っ先に浮上したのは要介護認定の精度をめぐる問題だ。とくに、痴呆症の高齢者の要介護認定が、実態より軽くなる傾向が相次いで指摘された。

 要介護認定は訪問調査の結果をコンピュータ処理する1次判定と、医師の診断をもとに専門家が下す2次判定の2段階で行われる。痴呆症の人には体が不自由でない人も多いが、はいかいなど介護する人にとっては苦労することも多い。

  1次判定用のソフトが、こうした面を反映できていないのが問題のようだ。しかし手直しには時間が掛かるため、厚生省は当面、2次判定での修正を図る方針とされる。

事務混乱

 手続きシステムの不備は、サービス事業者にも大きな負担を強いた。

 今月10日、介護保険制度で、サービス事業者による初めての報酬請求が締め切られたが、手続き事務が大混乱した。

 サービス事業者は一部の例外を除いて、1ヵ月間に提供したサービスの種類と量を利用者ごとにまとめ、コンピュータの専用ソフトで請求書を作成する。4月分のサービス報酬は審査を経て、6月末に支払われる。

 混乱の原因は、肝心のソフト開発が大幅に遅れたことにある。訪問介護に新たなタイプのサービスが2月になって盛り込まれるなど、直前まで見直しが続いたことが響き、ソフトの完成が大型連休明けまでかかってしまったという。

 厚生省などはこの事態を受けて、緊急に手書き請求を認めることとした。しかし、細かいコードの書き込みなど作業が複雑なために事務量が膨大となり、事業者の中には請求を翌月に持ち越す例も出ている。

施設不足

 介護保険制度は急速な社会の高齢化に対応するために、営利・非営利の事業者の参入を促し、福祉サービスを1つの産業として確立する道を拓いた。

 介護保険からもたらされる経済効果は、ストックとフローの両面がある。

 ストック拡充の効果は、サービスに必要な事業所やセンター、老人ホームなど各種施設の整備・建設の需要から生まれる。

 片やフロー面の効果は、介護サービスそのものに対する需要の増大、すなわち介護を要する高齢者が増えることからもたらされる。

 ある試算によれば、2005年までに東京都だけでストック効果が4900億円、フロー効果が5兆3000億円とされている。

 ただ、これも需給バランスが順調に推移してこそのものだ。

 厚生省は2000年度の需要を270万人と推定したが、今のところはは30万人少ない240万人にとどまっており、利用は低調と言える。

 しかし、療養型病床群の介護ベッド数は計画の六割強にしか至っておらず、そのほかの入所施設も不足している。片や在宅サービスでは、単価が安く採算の取りにくい「家事援助」に需要が集中。すでに息を切らし、撤退する事業者も出ているようだ。ケアマネジャー不足も、解消には向かっていない。

 市場として適正な形を整えるまでには、公共投資での基盤整備などを通じて、今後しばらくは需給バランスの調整が必要なようだ。

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