ニュースの眼

石原都知事に「NO」と言う集会≠謔


「開放国民」への反感/伝統的な差別意識の表れ
恵泉女学園大学教授 内海 愛子 

 「多文化共生をめざし、石原都知事に『NO』と言える4.28緊急集会」(4月28日、東京)における、恵泉女学園大学教授の内海愛子さん、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の渡辺英俊さんの発言内容をそれぞれ紹介する。

「第3国人」意味 

 石原都知事はこれまでも色々な形で「北鮮」や「三国人」などの差別語を繰り返し使ってきた。では今回は要点を絞って「三国人」という言葉の何が問題なのか。歴史的に見たい。

 敗戦後、日本を占領した米占領軍は在日外国人を管理の便宜上、3種類のカテゴリーに分類した。「第一国人」が米などの連合国人、「第二国人」が日本など枢軸国の人、そしてこの両方に入らない旧植民地、平和条約に伴い日本国籍を喪失した朝鮮人や中国人、台湾人が「第三国人」だ。

 「第三国人」という言葉自体は、日本の植民地統治と日本敗戦後の占領政策に由来する言葉であり、作られた時は純粋に管理上の用語だった。

 「解放国民」となった旧植民地出身者たち、つまり米占領軍によって「第三国人」に分類された人たちは自分たちでエネルギッシュに帰国や生活を守るための運動を起こした。そのほとんどは朝鮮人だが、そのエネルギーに満ちた活動ぶりに、これまで彼らを差別してきた日本人はある種の反感、恐れを抱いた。

 そして、敗戦によって打ちひしがれた日本人が「解放国民」となった在日朝鮮人に対する反感、蔑視など様々な感情を込めて「第三国人」という言葉を使い始めたのだ。「半島人」、「鮮人」とさげすんでいた意識に加えてさらに「横暴な」「無法な」朝鮮人という反感が、「第三国人」という言葉には込められていた。

 同時に、1946年2月からいわゆる「第三国人」に対しても「管理」する権限を持つようになった日本の警察が、旧植民地出身者の総称として使い出した。

 それまで権限がないためじくじたる思いをしていた警察は、「第三国人」の取り締まりに喜々として乗り出した。その結果、「闇市を支配する第三国人」などという見出しの記事が、マスコミを賑わせるようになり、「第三国人」という言葉、そのイメージがますます流布されることになった。

 45年8月15日の解放の日から在日朝鮮人はれっきとした「外国人」だ。国際法上どうであれ、日本にとって「朝鮮」は「第三国」でなく、日本人にとって朝鮮人は「第三国人」ではないはずである。

 しかし日本人は「第三国人」という新たな言葉に差別意識を込めて使い出した。そして「北鮮」「南鮮」「鮮人」などとともに、いまだ死語になっていない。使う方の日本人がたとえ無意識に言ったとしても、そこには伝統的な差別意識が表れており、蔑視意識が現存している。

 戦後、在日朝鮮人を「独立国」の人民として、「解放国民」として認識できなかった日本人の意識が、「いわゆる第三国人」という言葉を生み出し、これが今なお「外国人登録法」や「出入国管理及び難民認定法」など外国人を管理対象としか見ない意識を支えていることは、石原都知事 の一連の発言を見るまでもなく、よく分かるだろう。

偏見に満ちた数字操作
移住労働者と連帯する全国ネットワーク/渡辺 英俊

「警察白書」のウソ

そもそも「不法の外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している」という認識自体、事実に対する偏見だ。

 「不法外国人」を犯罪と直結させて考えるという偏見を日本社会に植えつけた最大の責任は「警察白書」の外国人犯罪の扱いと、それをうのみにして書き立ててきたマスコミと言える。

 98年版まで警察白書は、来日外国人(警察用語で、永住者、米軍関係者などを除いた在住外国人)の犯罪について、記述の冒頭に「検挙人員に占める来日外国人構成比の高さ」という項目を設け、人口構成比「1.0%」の来日外国人が刑法犯検挙人員では「1.7%」と高い構成比になっており、「国際化がもたらす治安上の問題として注目する必要がある」(98年版)というような記述を繰り返してきた。

 ところが、昨年の入管法改定の国会審議の過程で、この「1.0%」という人口構成比の根拠が、国勢調査からの推計であることが明らかになった。外国人の人口を、外国人登録より少ない数字しか出ていない国勢調査から持ってきて計算するのは不合理きわまりなく、悪意を持った数字の操作と言うほかない。

 検挙人員の方には直前に入国した外国人も算入されているのだから、それと整合させるには、その年の新規入国外国人を加えた数字を使わなければならない。そうすると人口構成比は約四%となる。4%の人口構成比に対して1.7%の検挙人員構成比というのは、日本全体(事実上日本人)の半分以下の検挙率だ。

 また警察白書の統計それ自体も丁寧に見ていくと、「外国人の犯罪が多い」という主張とは食い違う結果が出る。

 最近6年間(93年〜98年)日本全体の刑法犯総数に対する「来日外国人」の刑法犯総数の比率を見ると、検挙人員については2.5%から1.5%へ減少している。検挙件数は増えているものの、その比率は日本全体の3%以下。人口構成比4%からみると日本人より低いと言える。

 「凶悪犯」に限ってみても件数はここ数年横ばいであり、こうした数字を見る限り、来日外国人は日本人に比べて刑法犯の検挙比率が多いどころかむしろ少ないし、治安上の問題になるような増加傾向を示しているとは言えない。来日外国人の刑法犯件数だけを取り出して「増えた」と騒ぐことが、いかに偏見に満ちた言動かが分かる。

 警察白書は、「来日外国人」の検挙数を取り出して、前年と比べて増加している罪種を拾い出し、減少しているものについては10年前と比較するなど、意図的に増加を印象づける数字操作をしている。このように一部を拡大して「来日外国人」、とくに「不法」の外国人を「蛇頭」や暴力組織の犯罪と結びつけて、あたかも犯罪集団のように印象づける記述を繰り返している。

 これは、「外国人憎悪」という新しい形の人種差別・アパルトヘイトの扇動であり、国連・人種差別撤廃条約が禁じ、「犯罪」とするよう加盟国に求めている人種差別の扇動にほかならない。 (韓東賢記者)

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