それぞれの四季

「すし」か「すす」か/金才順


 ホームヘルパーの友人がいる。1週間に5軒の家を訪問し、部屋の掃除や買い物を代行、数日分の食事の作り置きもする。

  わたしの料理、なかなか好評なの」と嬉しそうに話す姿から、お年寄りに感謝され、充実した日々を送る様子が伺える。

 その友人が数日前、ある訪問宅で買い物を頼まれた。テーブルの上に置かれた「すす」と書かれたメモに、「?!」。

 「おじいちゃん、これお寿司でしょ」と聞くと「いんや、すすだ、すすだ」と頑固この上もない。(東北地方のなまりで「し」を「す」と発音する)

 思わぬところで、コミュニケーションの難しさを感じたと友人は苦笑いしていた。

 かのお年寄りにとって方言こそ「わが言語」なのであって、人生そのものなのかも知れない。

 翻ってウリトンポ1世の場合、日本語がじょう舌であっても年を重ねるにつれ、会話がおっくうになったり、ウリマルしか話せなくなる例が多々見受けられるそうだ。

 その言葉も故郷で使ったなまりの強いウリマル。介護先で細かいニュアンスが分からず、もどかしい思いをしたヘルパーもいる。

 そんな時の対応策として同胞生活相談所が運営する某居宅サービス事務所では、ホームヘルパーが集まり、ウリマルの勉強に取り組んでいる。

 慶尚道、済州道、全羅道などの方言を本格的に学ぶ。方言にも対応できるトンポヘルパーはハラボジ、ハルモニの心強い味方になることは間違いない。介護保険スタートから1ヵ月が過ぎ、意欲的な試みが続いている。 (ジャーナリスト)

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