雇用保険法政正案
「辞めた理由」で手当に差
「客観的判断できるか」疑問の声、高齢者冷遇に批判も
倒産やリストラ最大11ヵ月支給される失業手当が、定年退職の場合半年分カット
倒産やリストラで会社を辞めると最大11ヵ月もらえる失業手当が、定年退職だと半分近くカットされてしまう――。このような内容の雇用保険法改正案が14日、衆議院を通過した。今月末には参議院も通過、来年4月にも実施される見込みだ。この改正案、職を離れる理由が失職か退職かで、失業手当をもらえる日数に差を付けるというものだが、失職と退職をどう判断するかなど、課題は少なくない。改正案の中身と問題点を見た。 保険料率も引き上げ 加入者は、どんな理由であれ職を離れた場合、年齢と勤続年数(被保険者だった期間)に応じた日数に沿って、前職賃金の6〜8割相当の失業手当をもらえる。その財源は、本人が支払う保険料と国の負担からなる。現在、100万人以上が失業手当を受け取っている。 政府・与党の改正案は次の2点。1つは保険料率の引き上げで、失業手当の財源に余裕があった時期に0,8%(支払いは労使で折半)まで引き下げておいたのを、1.2%に引き上げる。平均的な労働者の負担額は、年額1万8800円(98年度)から2万8200円に増える。 問題は、失業手当をもらえる日数の変更である。 現行法では、職を離れた理由は失業手当をもらう日数には関係なかった。だが改正案では、倒産やリストラなどの理由によるやむを得ない失職、つまり「会社の都合」と、定年退職を含めて自分の意志による退職、つまり「個人の都合」という2つのケースに分け、前者は多く、後者は少なく日数を調節する。 例えば、47歳の人が25年間勤めた会社を離れた場合、現行法では理由を問わず、失業手当の保障期間は300日間。ところが、これに改正案を当てはめると、倒産やリストラによる失職なら330日間と約1ヵ月分増えるが、個人的な退職だと180日間となり、約5ヵ月分カットされてしまう(図表参照)。 労働省では、今回の日数調節で失業手当の保障期間が増える人は、失業者全体の3分の1程度にとどまり、残りは現状維持か逆に切り下げと見ている。これによって、支出額2兆1000億円(99年度見込み)の約2割が削れるそうだ。 だが、改正については問題点も指摘されている。 1つは、失職か退職かの線引きを客観的に行う難しさ。衆議院労働委員会でも、この判断が「全国一律に的確に行われるのか、疑問視する声」(読売新聞4月15日付)が目立った。 会社を辞める理由は人それぞれで、いくつかの理由が重なる場合もある。本人にとっては失業手当の金額がかかっているだけに、当然、公平な判断を望むところだが、「Aさんは失職、Bさんは退職」と決める行政側に具体的なガイドラインがないと、失業者の間で不公平感が募り、思わぬトラブルも生じかねない。 その一方で、改正案は高齢の失業者への配慮に欠けるとの指摘もある。 改正法では、年齢が若い離職者は比較的、優遇される半面、年齢が上がるほど失業手当をもらえる日数が現行法より少なくなる点も指摘されている。 高齢者の復職が難しいこの時期に、年金法改正で年金支給年齢を65歳に引き上げ、働く年数を5年間伸ばしたうえ、その間の失業手当給付期間を短くするという措置であるだけに、参議院での審議の際には議論を呼びそうだ。 (柳成根記者) 雇用保険による失業手当の給付日数
▲改正法だと−−
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