人種・民族差別問題について
外国人、日本市民ら集会

ここにもある 石原病


 石原慎太郎東京都知事の一連の外国人排斥的な言動に対し、在日外国人、日本市民らの抗議、批判の声が高まっている。20日、東京・永田町の参議院議員会館では「外国人入場禁止問題に関する院内集会―石原都知事病(人種・民族差別意識)はここにも表れている」が開かれた。

排斥か同化、迫る社会/根底に朝鮮差別の「伝統」

 日本の多国籍化、多文化化を考えるNPO、一緒企画(トニー・ラズロ代表)が主催した集会では、ロシア人船員が多く訪れる北海道・小樽市内の入浴施設、ブラジル人が多く住む静岡・浜松市の商店などで近年、相次いでいる「外国人お断り」の事例が紹介され、国や地方レベルにおける人種・民族差別を禁止する法律・条例を制定する必要性が指摘された。

 また、石原慎太郎都知事の最近の言動がこうした状況をさらに悪化させかねないものとして厳重に抗議するとともに、東京の有権者に向けて、(1)外国人排斥の差別的な考えを持たず (2)人種や民族を問わず犯罪や災害からすべての東京住民を守り (3)東京の社会の多様性と住民間の協力を図る――知事を選ぶよう求めるアピールを発表した。

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 ブラジル人ジャーナリストのアナ・ボルツさんは、「日系人の子供たちは、学校でいじめられないように日本人のふりをし、親が学校に来ることもいやがる。外国人としてのアイデンティティが否定され、隠さなくてはならない日本社会の状況はおかしい」と述べた。

 外国人だという理由で浜松市内の宝石店を追い出され、警察に通報されるなど屈辱的な仕打ちを受けたボルツさんは店主を提訴。昨年10月、店主の行為を人種差別撤廃条約違反だとする画期的な判決で勝訴を勝ち取った。

 その宝石店主をはじめ浜松の現状を取材したルポライターの藤井誠二さんは「宝石店主は敗訴した今でも自分たちが『差別した』という自覚がなく反省もしていない。むしろ『外国人=素行が悪い』との偏見から、差別されるのは外国人の責任だと主張する。これは、石原都知事の今回の発言にも共通する」と指摘。日本社会の外国人に対する態度は、異端視する偏見か、無理やり融和を強要する同化かの両極端できわめて不自然だが、これらは外国人そのものを認めようとしないという意味で表裏一体だと述べた。

 また龍谷大学の田中宏特任教授は、外国人を排除する日本の法制度ができあがってきた歴史的な経緯を具体的に説明し、伝統的な朝鮮人差別がその根っこにあると指摘した。

 弁護士の福島瑞穂参院議員(社民)は、「日本政府は外国人を管理対象としか見ておらず、外国人は煮ても焼いても構わないと思っている。石原発言も『外国人=犯罪者予備軍』という意識から出たもので、外登法、入管法をはじめとした日本の法制度にもこの意識は一貫している。今後、議員立法で外国人差別を撤廃するための法律、人権教育のための法律を作っていく考えだ」と述べた。

 日本政府は今年末から来年にかけて、社会権規約、人種差別撤廃条約という2つの国連人権条約の順守状況に関する報告書審査を控えている。双方共に報告書を作成、提出済みだが、問題は山積で、厳しい審査が行われるものとみられている。集会では、審査に向けたNPOの取り組みについても報告が行われ、明らかな人種差別撤廃条約違反である石原発言なども当然審査の対象となるようアプローチしていく方策が話し合われた。

 一方、人種・民族差別解消に制度面から取り組む川崎市の事例も紹介された。 (韓東賢記者)

在日朝鮮人・人権セミナー/緊急集会

 「石原発言に抗議する緊急集会」(主催=在日朝鮮人・人権セミナー)が21日、東京・飯田橋のシニアワーク東京で開かれた。石原発言を受け、「人種差別・戦争犯罪・戦後補償」と題して予定していた公開学習会の名称を急きょ変更したもの。

 あいさつした人権セミナー代表の床井茂弁護士は「足を踏んでいる人は踏まれている人の痛みを感じない。だから理性で感じる必要がある。それが人権擁護の第一歩なのに、東京都民はそんなことも分からない人を知事に選んでしまった」と述べた。

 人種差別撤廃条約の順守状況に関する日本政府報告書について報告した古川健三弁護士は、「在日朝鮮人差別の根本は、日本にとって朝鮮が一種の仮想敵国になっていることにある」と指摘。国連人権委員会での「慰安婦」問題の議論について報告した前田朗東京造形大学教授は「ナチスがいいこともやったと述べたオーストリアのハイダーを極右と呼ぶ日本のマスコミは、なぜ石原知事を極右と呼ばないのか」と語った。

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