記者が行く体験コーナー

そば打ち

信州を代表する戸隠そば
「挽きたて」「打ちたて」「ゆでたて」が一番


素早い作業が風味、味を守る

 最近、同胞たちの間でも趣味でそば打ちをする人が増えている。今回は、信州を代表する長野・戸隠(とがくし)のそば打ちを体験した。戸隠村役場観光課の協力のもと、旅フェア2000(19〜23日、千葉・幕張)で行われた実演および体験に参加した。

 この日指導をしてくれたのは、「手打ちそば処 奥社前食堂」の菅野広一さん(28)。この道6年の若手職人だ。

 材料(4〜5人分)は、そば粉700グラム、小麦粉300グラム、熱湯50сс、冷水300〜350сс。用具は、こね鉢(なければボール)、打ち台(大きなまな板)、そば切り(包丁)、のし棒などが必要だ。

 小麦粉の代わりに山イモやヨモギを使い風味を出す地方もあるが、戸隠のそば粉は元々風味があり、味が濃いため、風味を出すための食材は使用しない。これが戸隠そばの特徴の1つでもある。

 では調理にかかろう。まず、こね鉢にそば粉を入れ熱湯を加え、水分と温度が平均に行きわたるよう、手のひらで全体をまんべんなくほぐしながら、小麦粉を加える。冷水を少しずつ加えながらさらにほぐす。

 次に、こね鉢の表面についている粉を生地にすりこんでいくような要領で、手のひらのふくらんだ部分で強く押しつけるようにこねる。しかしこれがなかなか難しく、こね鉢が前方にずれ、力が入らない。

 「両脇をひき締め、上から体重をかけるのがコツ」と菅野さん。職人技を見せつけられたようだった。

 こねていると、生地の表面がきめ細かくなり、滑らかになったら、次にへそ出しという工程がある。だんごをつくる要領で生地を中央に集め、円盤状に形を整えながら、空気を抜く。ここがこしのあるそばを作るための重要なポイントだ。かなりの重労働だが、ここまでの作業を素早くこなさなければ、そばの風味、味を守ることはできない。

 次に伸ばしに入る。打ち台と生地、生地と生地がつかないよう、打ち台と生地の上に、打ち粉(そば粉)をまく。のし棒の両脇を両手の手のひらで軽く握り、生地を一気に伸ばすのではなく、生地を回転させながら円形状に少しずつ伸ばす。生地の厚さが約1.5ミリになったらでき上がり。

 生地を半分にたたんだ後、両側から中央に合わせるようにさらにたたむ。その際、そばとそばがつかないよう、打ち粉をそのつどまく。最後にもう一度たたみ、そば切りで1.5ミリ単位に切る。

 自分が打ったそばは不格好ながら格別とよくいうが、まずまずのできだった。そばを味わうには「3たて」といわれ、「挽きたて」「打ちたて」「ゆでたて」が一番。打ったそばを持ち帰って、さっそく味見したが、「さすが本場、美味しい」(妻)だった。
 戸隠のそば打ちは、戸隠村のそば博物館「とんくるりん」(TEL 026・254・3773)でも体験できる。 (羅基哲記者)

 ゆで方

 多めの水を煮立て、そばをほぐしながら入れ、お湯が再び煮立ったら、水を差す。もう一度煮立ったところで、そばをあげ、冷水で冷やしながら軽くもみ洗いしてぬめりをとる。

 つゆの作り方

 水880ссを沸騰させ、削り節20グラムを入れ、火を止める。5分間そのままにし、上ずみ液をとる。みりんとしょうゆ各200ссを入れ火にかけ、沸騰したらでき上がり。

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