在宅市場、気になる需給均衡
新築活況、低金利など追い風
中古は値崩れ、空家も増加
建設省−質向上と流通を促進 住宅市場の動きに、関心が集まっている。これまでは人口の増加や大規模な移動、急速な経済成長に合わせて住宅が供給されてきたが、バブル崩壊や少子高齢化など今や社会状況は大きく変わった。需給バランスの現状などを見る。 マンションブーム 史上最低水準の住宅金融公庫ローン金利や税制面での優遇、地価下落などによって、住宅着工は昨年、久し振りに盛り返した。 なかでも首都圏と近畿圏の新築マンション市場は、過去最高とも言われる活況ぶりだ。不動産情報サービス会社・東京カンテイによると、首都圏(1都3県)における昨年の供給戸数は、約9万3000戸。前年より25.8%も伸びた。近畿の2府4県でも、約3万8000戸で前年より19.9%増えている。 また物件を類別すると、2000〜3000万円台の低価格帯の割合が拡大し、1戸当たりの占有面積が広くなっている。すなわち、「価格は安く面積は広い」という傾向にあるのだ。さらに、最寄駅からの平均所要時間も短くなっている。 背景には、企業のリストラで都市部に遊休地が出ていることや、当面の売上を確保したいゼネコンが、赤字すれすれで工事を受注していることがあるらしい。 購入者からすれば好条件が揃っていると言え、日本高層住宅協会によれば、月間契約率はこの半年間連続で80%台の高水準を維持している。 首都圏では、1000万円台の物件が全体に占める割合は、90年にはわずか1.2%に過ぎなかった。それが昨年は35%を超え、2000万円台と合わせると全体の74.2%になる。主要駅別(首都圏)では、平均価格が半分以下になった所も少なくない。 原因については、「条件の良い新築に比べ、中古はどうしても見劣りする」というのが大方の見方だ。 新築の大量供給は今後もしばらくは続きそうだが、中古が売れないまま老朽化し、果ては「スラム化」しないかと心配されている。 日本で住宅戸数が世帯数を上回ったのは、1973年。当時の空家数は172万戸だったが、98年には632万戸に達した(三和総研調べ)。 それも、かつてのマンションブームや消費税引上げ前の駆け込み着工で供給され、景気後退とともに売れ残った物件が多いようだ。 三和総研では、世帯数の伸びの鈍化、若年層人口の減少などを背景に、中長期的な住宅着工数は大幅に減少すると予想。加えて、すでにある住宅ストック(中古など)に関連した市場の拡大や、高齢化や環境問題に対応した住宅需要が増える可能性を指摘している。 建設省は昨年から今年にかけて、住宅関連の法律を矢継ぎ早に制定・改正。施工業者への品質保証の義務付けなどで新築物件の質の充実を図っており、今後は優良中古住宅向け融資の返済期間延長などを通して、良質なストックの流通促進に取り組む。 また日本の住宅寿命は欧米の半分から3分の1程度と言われるが、メーカーでは低コストで長く住み続けられるロングライフ住宅の普及に力を入れている。 今後、住宅の購入や投資を考える際には、価値評価の変化や大幅な需給バランスの調整期が訪れる可能性を、考えておくべきかもしれない。 (金賢記者) |