ソクタム―ことわざ辞典

お前の病気が治ろうと治るまいと、俺の薬代は出せ


 「お前の病気が直ろうと直るまいと、俺の薬代は出せ(=ネ ピョンイヤ ナットンアンナットン ネ ヤカッシナ ネラ)」

 「食べても飢え死にする(=モッコド クモチュンヌンダ)」

 いずれも、他人のためにしてやったことの結果はさておき、その報酬ばかり要求することや、欲が深いことのたとえとして、一般的に使われている。

 それを、描写している民話に「千金の夢はたったの火打石」がある。



 むかし、ある林に欲の深い金持ちの男が住んでいた。 ある日、金持ち男は、旅の道中で川の中に入ってけん命に何かを探している青年に出会った。

 欲深い男は好奇心にかられ、「もし、そこの旅の方、何をそんなに探しているのかね?」と尋ねた。

 すると、青年はしぶしぶ「一生使っても、使いきれない物を落としてしまったのですよ、一生…」と答えた。

 金持ちはそれを聞くと、もう矢も盾もたまらず、服の袖とパジ(ズボン)の裾をたくしあげながら、「一緒に探してあげましょう」といった。

 かくして、金持ちは相手が頼みもしないのにじゃぶじゃぶと川に入ってしゃがみこみ、手や足先で川底を一生けんめいに探り始めた。 「ふーん、きっとすごい宝物のはずだ。うまくすれば半分ぐらいは分けてもらえるかも…」

 こうして、かれこれ1時間も経ったころ、「物」を見つけだすことができた。が、金持ち男が握ったのはなんと小さな火打石であった。「火打石なら最初から言え。これを見ろ!わしの服はめちゃめちゃに汚れたじゃないか、どうしてくれるんだ」。

 旅の男はあっけにとられていたが、笑いながら答えた。「一生使っても使いきれない物には違いありません。頼みもしないのに欲を出して勝手におやりになって、言いがかりをつける気が知れませんね」。

 そう言われると、金持ち男は絶句するよりほかなかった。一攫(かく)千金の夢が破れた欲深い者は、泥まみれの服をたくしあげて、家に帰っていった。

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