医療保険制度改正、先送りへ
政府・与党、総選挙を前に政治的判断も


「患者負担増」に思わぬ反発
診療費を「定率払い」に、「受診控え」を医師会懸念

 医療保険の制度改正作業が滞っている。今年中の実施を目指していた「医療保険制度改正関連法案」について、日本の政府・与党は11日までに、今国会での成立を見送る方針を決定。年金保険の改正や介護保険のスタートなど、社会保険の仕組みの変化に乗り遅れる形となった。その背景には、改正内容に対する医師側の反発や、解散・総選挙を念頭に置いた政治的判断があるようだ。

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 医療保険改正の大きな柱は、高齢者が自己負担する医療費を、これまでの「定額払い」から「定率払い」に変えるというものだ。

 現行制度では、70歳以上の人が診療を受ける場合、入院の際は1日につき1200円、外来の際は月に4回までは500円、それ以降は無料となっている。また、診療費とは別に、外来の際の薬剤費の一部を別途で負担することにもなっていたが、これについては昨年7月から、70歳以上の人に限り、特例措置として免除されている。

            
医療保険制度の仕組み 

 改正案では、診療費の1割程度の定率負担に

●入院=1日あたり  1200円

●外来=通院1回あたり  500円

    1ヵ月以降、もしくは5回目以降は無料

●外来の際の薬剤費(70歳未満のみ)負担

               2〜3種類=  30円

内服薬1日分―  4〜5種類=  60円

               6種類以上=100円


               1種類    =50円

外用薬―       2種類    =100円 

               3種類以上=150円

頓服薬―        1種類あたり10円 

 このように金額があらかじめ決まっている定額制を廃止し、入院・外来を問わず一律に、診療費の1割を負担する定率制にしようというのが、昨年7月に出された政府・与党案である。支払う金額に関しては、高額になりすぎないよう、上限を設けるとしている。

 同案の内容は、定率制導入のほか、現在は特例措置という名目になっている薬剤費負担を正式に廃止することや、70歳未満の人の診療費については自己負担の上限を引き上げることなどが柱となってい
る。

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 政府・与党は、今国会で成立させたうえで、今年中、早ければ7月にも実施に踏み切る構えだった。だが、ここにきて、改正を見送った背景には、主には次の2点が挙げられる。

 1つは、改正に対する医師側の思わぬ反発だ。

 定率制は定額制と異なり、診療費がかかればかかるほど自己負担額が大きくなる。上限が設けられているとはいえ、高額であることを理由に、高齢者が受診を控えるという事態が想定される。これに対し、日本医師会は「『受診控え』の現象が起こると高齢者の健康保持に重大な支障が生じる」としており、政府・与党側もこうした意見を無視はできないということがある。

 もう1つは、政治的判断である。

 首相の交代や、自由党の離脱による連立政権の枠組みの変化などがあり、解散・総選挙を念頭に置いた政局運営を強いられている政府・与党にとっては、患者の負担増というマイナスイメージは避けられない今回の改正案を無理に通すことで、改正案に反対している野党側に追い風になるなど、選挙の際に多大な影響が及ぶことがあり得る。

 また、衆議院厚生委員会では他の法案の審議が詰まっており、医療保険改正案の審議が時間切れになる公算が大きいことも、改正見送りに踏み切った要因の1つと言える。(柳成根記者)

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