「読売・中公 女性フォーラム」/東京
少子・高齢社会を考える
少子・高齢社会を女性の視点で考えていこうと、「読売・中公 女性フォーラム21」(読売新聞、中央公論主催)が12日、東京・港区の日比谷公会堂で行われた。コーディネーターの樋口恵子・東京家政大学教授をはじめとする女性パネリストの発言に、会場からは時折、大きな拍手と笑いが起こった。このテーマは、同胞社会にも関わる共通のものとして受け止めることができる。内容をまとめた。 パネラーの発言から 高学歴、社会進出が原因ではない 少子・高齢化ということは、どこでも論じられている。だが、実は少子化は全世界を覆うものではない。世界的には、このままいけば人口は暴発するという統計がでている。さらに日本、イタリア、ドイツ、または「韓国」などの儒教国で、低出生率の現象が起きている。米国をはじめとするアングロサクソンにはほとんど影響がない。 日本の少子化が進んだ理由は、これまで女性の高学歴と社会進出だと言われてきたが、まったくの的外れな指摘だ。それは、男女の婚姻率の低下に原因があるのだ。 日本は比率からいって最大のシングル大国であり、それは決して女性だけの問題ではない。 少子化は突然やってくるのではない。少子化がなぜ問題とされているのかだ。少し前の世代の家庭は、一人っ子家庭というのはほとんどなくて、子沢山がよしとされていた。だが、母親は子どもに時間とお金をかけ丁寧に育てたいと理想を持つようになった。ある意味で、その理想に少し近付いているとも言える。 それを少子は悪い、国民経済が落ちるという発想にすぐにつなげず、考えるべきは、空いている部分、たとえば専業主婦の活用、定年を迎えても元気な高齢者をどうするのかなどだ。また、海外移民を受け入れていくといった、ある意味で避けてきた部分をしっかりと議論していくべきだ。 政策としてエンゼルプラン(注)を推進したりしているが、社会的にはまだまだ子育てをする女性の負担は大きい。 それとは逆に子どもに手をかけ過ぎて、なかなか自立しないパラサイトシングルも増えている。そういう意味でも、これから子どもを育てる女性の意識を変えていく必要がある。
社会保障の側面から考えるべき 河野真理子・キャリアネットワーク常務取締役 12年前に会社を作ったが、日本の雇用環境をみるとはやはりいびつだと言わざるをえない。現場の女性の話に耳を傾けると、仕事をやめるきっかけのほとんどが出産だ。会社側もそう認識している。 女性の側は、1度現場を離れれば2度と復帰できないのではないか、保育事情などを考え両立は難しいと判断してしまう。そこへ会社では男性がリストラされており、女性は子どもどころではないという思いにかられている。 会社での評価は、大体20代後半から30代前半で作られる。その時期が仕事のやり時だが、また、女としても結婚適齢期なのだ。 実際、女性の側が選んで今の状況にいるのかといえば、そうとばかり言えない。産みたいけど産めない、両立したいけどできないといった事情が見えてくる。それらを社会保障の側面から考える必要がある。 自立したプラン選べる社会に 男女における役割分担は今の社会を見渡すと、固定的なものではなくなってきている。 昨年、日本では「男女参画基本法」が成立した。この法案が成立した背景には、今回のフォーラムのテーマでもある、少子・高齢化の進展を上げることができる。 確実に進む少子・高齢化は社会構成のあり方に深い変容をもたらしている。 また、それは、日本という一国内で完結して考えられるものでもない。 男女が対等な構成員として社会に参画していくことは、これからの豊かな社会を築いていくことにつながっていくのだ。そのためには、育児と介護を家庭の中で女性だけが担い、もっぱら男性は外で働くという固定的な役割分担にとらわれず、男女それぞれが多用なライフスタイルを選択できる社会を作っていくことだ。 フォーラムでは、こうした問題で、きたんのないディスカッションが行われた。 フォーラム出席者の1人でもある張明秀・「韓国日報」社長は、「自立は孤立ではない」と述べた。 その言葉にもあるようにフォーラムでは、これからはそれぞれが自立し、ライフビジョンをどう立てていくのか、何を、どのような接点をもって社会に貢献していきたいのか、それを個人が考えていく時代であり、自己実現を目指していく時代だということが指摘された。 樋口さんは、女性が自立することは、男性社会を脅かすことではなくて、むしろ男性の負担も軽くし、結局は、男性を助けることにつながるのだと強調していた。それならば、この問題は当然、男性、女性という認識でとらえるのではなく、社会全体が取り組むべき問題であるということを、男女がともに理解していく必要があるということだ。 (金美嶺記者) |