来春登場、次世代携帯
「脱電話」のスーパー端末


パソコンしのぐ大型市場/伝達スピード200倍に

 情報通信で、パソコンをしのぐ大型市場の出現が期待されている。日本では来年春にもお目見えする「次世代携帯電話」がそれだ。従来に比べ飛躍的に通信容量が大きくなり、電話の域を超えた通信端末になる。生産・普及にともなう巨大な投資や、まったく新しい情報サービスの展開など、その動向からは目が離せない。

ドコモが先陣

 欧米に比べ情報化が遅れているとされる日本だが、携帯電話サービスではNTTドコモの「iモード」を筆頭に、世界をリードしている。次世代型の登場も世界で最も早く、ドコモが来年5月頃に東京23区と川崎市でサービスを開始し、3年間で全国に広げる。Jフォングループは来年秋、DDI―IDOグループも再来年中にサービスを始める予定とされる。

 次世代型の最大の特徴は、データ伝送速度が格段に増すことだ。現行型では毎秒9600ビットだが、次世代は最大約2メガ(=200万)ビットと、実に200倍にアップする。

 「iモード」をはじめ、現行のサービスでもインターネットへの接続やデータ通信、静止画の送受信はできる。だが次世代型なら、画像圧縮技術を用いることで「携帯テレビ電話」となることも可能だ。そればかりか、ゲームや音楽など容量の大きいコンテンツも素早くダウンロードできるので、電話の域を超えて用途が広がる。

 インターネットによる音楽配信事業は日本でも本格化の兆しを見せているが、既存の通信インフラではダウンロードに時間がかかり過ぎるのがネックになっている。企業のなかには、「次世代携帯電話が手軽な音楽プレーヤーとして使えるようになれば、音楽配信にも弾みが付く」と期待を寄せるところもある。

10億台規模に

 次世代型の登場は、情報通信産業に大きなインパクトをもたらす。

 例えば欧州では、現行型の利用者がデータ送信を利用する割合は、携帯電話サービス全体の3%にとどまる。次世代型の普及によって、その割合は移動体通信サービスの過半を占めると見られている。

 また現行では、技術規格の違いから日本、欧州、米国の市場が分断されているが、日欧が採用する次世代型規格「W|CDMA」と米国が採用見込みの「cdma2000」なら、同じ端末で同じサービスを受けられる。とくに欧州では、国境を超えた市場への参入を目指し、各国の企業が事業免許取得の入札に巨額の資本を注ぎ込んでいる。

 端末メーカーからすれば、次世代型の登場によって市場が一気に巨大化する。世界の携帯電話市場の規模は今年で4億台になるが、次世代型の登場によって、2003年末には10億台に達するとの予想があるほどだ。さらには、通信サービス会社の莫大な設備投資を受けて、情報通信や電機関連産業が広く潤うとの見方もある。

 携帯電話は、日本の情報産業の復権を担う数少ないホープとされており、他国にも増して、日本の次世代携帯ビジネスが盛り上がるだろう。

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