寅さんシリーズを作る一方で「幸福の黄色いハンカチ」「息子」などの代表作を次々に発表してきた。この数年は「学校」シリーズを制作中。「学ぶということは、本当はどんなに楽しいことか。教えるということが、先生にとってもどれほど喜びであるかをこの映画で描きたかった」と語る。
「学校」は下町の夜間中学が舞台。先生と生徒の心のふれあいを描く。そこには在日のオモニや登校拒否の少女、家庭の事情で通えなかった中年男性がいる。
「朝鮮人もいれば、中国人も、ベトナム人もいる。その意味では国際色豊かな映画でしょうね」。映画は、そんな生徒たちを見守る教師を通して、教育に鋭く切り込む。「今の日本は、教育を含めて人間が幸せになれたかというと、決してそうではない。学校は地獄のような競争社会の中で、窒息しそうな子供たちをたくさん生み出している。なぜ、こんな風になってしまったのか、どうすればいいか、もう1度考え直してみたいと思いました」。
企画が生まれたのは、80年代の終わり。その頃夜間中学の取材で大阪の猪飼野によく通った。「そこには働き者で、勉強熱心な朝鮮のオモニたちがいっぱいいて、すっかり仲良くなった。様々なハンディを背負いながらも、他人への思いやりと優しさに溢れた人たちでした。昔、東京の下町にあったような温かいコミュニティーでした。映画では人間の持つそんな優しさが描ければと思いました」。
(粉) |