ざいにち発コリアン社会

民族学級講師達の座談会(下)/京都市の現状
いつどこにいても朝鮮人忘れずに


座談会参者

陶化小学校   田敬子(53)=講師歴29年
                    鄭穂美(44)=講師歴11年

山王小学校   金必善(50)=講師歴32年
                    崔文子(48)=講師歴19年

養正小学校   金桂子(48)=講師歴16年

色々な形で集える場所を/田
埋もれている子供たち探す/鄭
教科書のビジュアル化も/ 崔

何年経っても道であいさつ/金桂
卒業後も学べる場必要/金必

 ―民族学級卒業後の子供たちの行く末について。

 金必善 心配な部分もある。小学校の4年間は民族学級を通じてウリマルや歴史、文化を教えることができるが、中学になれば民族学級がない。朝鮮学校などに行ってくれれば一番良いが、実際には日本学校に行く子供の方が多い。

 崔文子 6年生の子供たちにはあえて帰化の問題について話すようにしている。これからは民族学級で学ぶ機会はなくなるが、いつどこにいても朝鮮人であることを忘れてはいけない、朝鮮人として堂々と生きてほしい、帰化をして民族を捨てるのは反対だと。そうすると、「私は海外で暮らすのが夢で、いつかは帰化しようと思っていた。でも先生に話を聞いてはっとした。自分の考えが間違っていることに気づいた。これからは朝鮮人として生きていきたい」と作文に書く子も出てくる。こういう話をする友人や大人がいるわけでもないので、私たちの話が子供たちの考えに少なからず影響を与えているようだ。

 金(必) 昨年、「日本で朝鮮語を習う必要があるか」などいくつかの質問を設定し、それにイエス、ノーで答えさせ、意見が分かれれば、それを持ってディベートさせるという授業を試みたことがある。冒頭の質問に対しては「日本で生きていくのに特別必要ない」「南朝鮮から来た人に道を聞かれた時は答えられるから必要」「朝鮮人だから知って当然」など様々な意見が出された。ひととおり議論を交わした後にもう一度同じ質問をすると、全員が「イエス」と答えた。重要なのは子供たち自身に考えさせることだ。

 金桂子 民族学級の卒業生たちは、何年経っても道であったら挨拶してくれる。そういう時、教えて良かったとつくづく感じる。

 ―講師をしていて大変なことはあるか。

  大変というか、教科書の問題がある。今は5人の講師たちが知恵を出し合って、手作りしているが、やはり限界がある。少なくとも4年間子供たちが学ぶのだから、もっと印刷も良くてビジュアル的な物にしたいと思うのだが。

 田敬子 もっと興味を引けるものなら、子供たちの学習意欲も高まるのではないか。やはり子供たちが対象だから、絵や写真があって、しかもカラーであれば、それだけで勉強する意欲が湧いてくるだろ
う。

 金(桂) 学芸会で着るチョゴリなどの衣装が足りない。寄付してくれる人や学校があれば良いのだが。

 ―日本人の先生たちの対応は。

  おおむね協力的だ。

  今や陶化、山王、養正の3小学校は民族学級があることが一つの特徴になっている。

 金(必) 山王小の場合は研究授業の時には全国から教員が来るが、その時、民族学級にはアトラクションの出演依頼が必ず来る。

 鄭穂美 他の学校から来た教員たちは民族学級の授業やアトラクションを見てとても感動する。日本の学校で、朝鮮人としての誇りを持って学んでいることに関心するのだろう。

 ―今後力を入れることは。 

  民族学級で学ぶ機会に恵まれた子供たちは良いが、そういう機会がなければ日本人になっていく。民族学級に限らず、同胞の子供たちが色々な形で集まれる場所を増やすべきだ。

  子供たちには、どこに住んでいても朝鮮人である以上、ウリマルを知るべきだと伝えたい。それが特別なことではなく、当然だという感覚を持ってほしい。

  京都には、国際化に向けて日本の子供たちを教育する国際クラブがある。そこの教員に働きかけて、埋もれている多くの同胞の子供たちを探していければ。民族学級に参加せずに、そういったクラブに出ている子供もいるからだ。

 金(必) 昔とは環境も異なり、子供たちの考えも多様化している。同化はより進んでいる。そういったなかで、4年間で民族心が持てるようになるのはなかなかむずかしい。だからこそ、民族学級を卒業した後も、子供たちがウリマルや歴史を学べる方法を考えていくべきだ。
(文責編集部、文聖姫記者)

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